電磁場が乳酸菌に与える影響

農業生産機械学 08-080 鈴木雄一


1. はじめに

 近年,生物の成長に対して影響を与えうる電磁場が存在することが明らかになりつつある。本実験では電磁場の生体に与える影響を調べるため,成長が早く,同時に数多くのサンプルが計測可能で,育成管理の簡単な乳酸菌を用いて様々な電磁場環境下での菌の増殖を観察した。

2. 実験装置及び方法

 本実験では温度を30℃に保持できる環境制御室内で乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. Lactis biovar diacetylactis NIAI N-7)を液体培地5mlが入った試験管で培養した。菌数の測定は段階希釈法と,画像濃度値の変化の計測で行った。画像濃度値の計測では試験管の濁度の変化を観察するために,試験管内の乳酸菌が増殖して培地が白濁する様子をTVカメラで撮影しVTRで記録,パーソナルコンピュータで画像処理を行った。画像濃度値から乳酸菌の菌数を測定する。その上で乳酸菌に電磁場を印加し,その影響をリアルタイムに計測した。磁場の設定を定磁場では電磁波強度0.01mT,0.1mT,1mTの3種類,変動磁場では電磁場強度を1mT,周波数1Hz,10Hz,100Hz,1kHzに設定して実験を行った。

3. 実験結果及び考察

 図1に乳酸菌の菌数と画像濃度値の相関を示す。乳酸菌の菌数と画像濃度値との間において,0〜12hまでの相関は高いが,12h以降の相関は低くなっている。乳酸菌の菌数がピークに達するまでの菌数増加時に関して,初期及び最大の菌数が分かれば誤差の少ない画像計測が可能であることがわかった。しかしピークを過ぎ菌数が減少し始める12h以降は浮遊する死体もカウントしてしまうことで正確な数値は得られなかった。図2,図3はそれぞれ横軸に経過時間,縦軸に濃度値を菌数に変換した値を示す。図2は乳酸菌にそれぞれ0.01mT,0.1mT,1mTの強度の定磁場を印加したものであるが,差はみられなかった。図3は変動磁場を印加したときのものである。1〜100Hzに有意な差はみられないが,1kHz印加時の乳酸菌はコントロールに対し時間にして約1時間の成長促進が得られた。