マイクロ波リモートセンシングによる水田調査

マイクロ波リモートセンシングによる水田調査

塩見 潤

1. はじめに
 リモートセンシングは、「離れたところから直接触れずに対象物を固定あるいは計測し、またその性質を分析する技術」と定義されている(日本リモートセンシング学会)。19世紀半ば、気球からの観測にはじまったとされているリモートセンシングは、近年宇宙からの観測、すなわち地球観測衛星にまで発展し、それぞれの観測衛星には各種センサを搭載しており、物体から反射または放射される電磁波を計測している。しかし、LANDSATをはじめこれまでに使用されてきた電磁波は、短波長のため雲や雨つまり気象条件に影響され、特に日本のようなモンスーン地帯において高品質の画像データを入手することは難しい。この問題解決のために、雲や雨を貫通することができ気象に影響されないマイクロ波レーダを搭載した衛星が打ち上げられた。本研究では、マイクロ波レーダを搭載したRADARSATと航空機による岡山児島湾干拓地水田の画像データを入手し、現地調査で得られたデータ等と比較して、解析を行った。

2. 研究内容
 RADARSATによる児島湾周辺地域の観測予定日に合わせて現地調査を行い、水田のデータを収集した。そして、入手したSARの生データから画像を生成し(図1)、X.C.Lの各バンドにおける水田の作付け方向角と画像強度の関係を明らかにし、多時期におけるRADARSAT画像と稲の生長とを相対的に考察した。


図1 RADARSATによる映像


3. 研究結果及び考察
 図2に各バンドにおける濃度値抽出結果を示す。この図より、全てのバンドにおいて作付けられた角度によって特徴的な画像濃度のピークが見られ、レンジ方向に対する作付け角が画像濃度に依存していることがわかる。図3は6回の観測におけるRADARSAT画像から調査水田における濃度値の変化を示したものである。まず田植えから稲が穂をつけるまでの生育前半部において、稲の生育とともに画像強度も増加している。稲の作付けを観測し生育を測定する上で有効な時期であると考えられる。しかし生育後半部になると、穂の重量増加や風などによって起こる稲の倒伏は水田ごとに多種多様であり、グラフからもわかるように画像データから濃度値は大きくばらつき、生育状況を判断することは難しい。

図2 作付方向角の依存性 図3 RADARSATによる画像濃度値変化