サツマイモ育苗作業自動化のための画像処理技術

サツマイモ育苗作業自動化のための画像処理技術

農業生産システム工学 08-148 森本 純

1.研究目的
 サツマイモは,食糧,エネルギ資源,環境に対する有用性が高いといわれている。本研究では,植物工場内でのサツマイモ増殖用挿し穂生産の自動化における,穂木切取のための画像処理方法に関する検討を行った。

2.実験装置および方法
 育苗作業を自動化するためには,サツマイモ苗の隣り合う節の間で主茎を切断し,それぞれ一葉を有する穂木を切取る必要がある。本実験では,850nmの光学フィルタを設置したモノクロTVカメラを用いて,ポットに立毛中の3〜7枚の葉を有する苗の画像を1個体ずつ2方向(90°間隔)から取り込み,画像処理ソフト(WinROOF,三谷商事(株))で切断候補点の検出を行った。図1に検出のアルゴリズムを示す。まず,原画像を読み込み,メディアン,グラディエントなどのフィルタを用いて主茎と葉柄部分の濃度値を高めて強調する。葉の輪郭部分も同様に強調されて画像内に残るため,複製した原画像に細線化,オープニング処理して葉の輪郭線を抽出し,先の画像から減算することによって,主茎と葉柄だけの画像を作成した。ここでは,主茎と葉柄の交点を節とし,細線化,膨張処理の後,平均化フィルタを使用して各節(交点)を抽出した。そして、同一個体の2画像に関して上述の処理を行い,両画像の節の対応付けを行って,最終的に各節の中点を求め,その点を切断候補点として検出した。図2に切断候補点検出結果例を示す。

3.実験結果及び考察
 本実験に用いた苗は24個体であり,節の総数は127節であった。そのうち画像上で認識できた節の数は112節(88.2%)で,このうち表1に示すように,90(80.4%)の節が正しく検出された。未検出の19.6%は,背景(葉の裏など)との濃度差が小さく,葉柄として認識されなかったためである。また,節が存在しない部分を検出した誤認識の数が34あった。これは,葉脈など葉の輪郭以外の部分,あるいは完全に除去できなかった葉の輪郭が,処理の結果葉柄と誤認識されたためである。切断候補点としては,節の検出結果をもとに124点が検出された。このうち,正しく節の間を切断した点は61点であった。残りの63点は,誤認識した節の影響によって節の間を複数の箇所で切断するもの,および未検出の節の影響によって複数の節を有する穂木を生じるものであった。ただし、誤認識の中には切断しても穂木に影響を与えない点が多くあり,それらを含めると約8割の切断に成功した。切断候補点は前段階である節の抽出の結果に依存するので,節の検出アルゴリズムにおいて多値化の利用など,精度をより高めていくための検討が必要である。また,画像入力方法を検討することで,より鮮明な原画像が得られれば,直接,節の誤認識や未検出数を減少できると考えられた。


図1 認識アルゴリズム

図2 切断候補点検出例
表1 節の検出結果
検出数90(80.4%)*
未検出数24(19.6%)*
誤認識数34
* 112節中

表2 切断候補点検出結果
全検出数124
正検出数61
誤検出数63