Quality Evaluation of Apples Using Skin Color and Spectral Reflectance

Quality Evaluation of Apples Using Skin Color and Spectral Reflectance
(果皮色と分光反射率を用いたリンゴの品質評価)

陳 永波

 現在,果物の品質に対する消費者の要求がつぎつぎと高まっている。生産者は品質の高いものを生産し、消費者に届くまでの過程でその品質を外観から非破壊で正しく評価しようとする研究が進められている。ここでは,リンゴの品質評価を行う方法として,果皮色及びその表面の分光反射率により,王林とふじの2種類のリンゴについて損傷部の色彩特性及び分光反射率を求め,それらの差より損傷部を検出する方法について検討し,また,内部品質としての糖度と果肉硬度については,分光反射特性から分光反射率が極大,または吸収を示す波長の分光反射率を用いて推定する方法を研究した。
 まず,色の三刺激値原理を利用し,果実のカラ−画像から表面の色を表色系の数値(color value)で表すことを行い,正常部と損傷部の数値を比較して,損傷部を検出することを検討した。損傷部は0.25mの高さから床に落下させて作り,落下させて1時間経過後と1日経過後を損傷部として画像デ−タを取り込み,正常果に対する果皮色の差を表色系の数値に置き換えて表し,損傷部の判別の可能性を検討した。
 その結果により、落下1時間経過後,王林リンゴについて,ある表色系の数値で損傷部の判別が可能であることが分かった。特に,RGBのG値,XYZのY値,HISのI値などで正常部と損傷部の差は大きくなった。ふじリンゴについて,落下損傷1時間経過後,表面色の部分にある損傷部は表色系の数値で判別するのは困難である。しかし,地色の部分にある損傷部の場合に損傷後その経過時間によって,色の変化による差が大きくなるため,表色系の数値で判別することは可能であることが分かった。
 以上の結果をもとに,カラ−画像解析システムを利用し,王林リンゴの損傷果検出ソフトを開発した。これは王林リンゴのカラ−画像のG信号を利用して,リンゴの画像を二値化し,リンゴの損傷部と正常部とのリンゴ画像の複雑度の違いを指標として,損傷果と正常果を判別することを行うもので,高い確率で判別することができた。
 さらに,カラ−画像を利用して,損傷果と正常果を判別することに加えて,可視域の波長380nmから近赤外域の波長2600nmまでの分光反射特性を測定し,損傷部と正常部の特性を解析した。その結果,王林,ふじともに,700nmから886nmまでの波長域で,損傷部と正常部について分光反射率の差が大きいため,損傷果と正常果の選別が可能であることが分かった。
岡山県のリンゴ園で袋掛けして栽培された王林及びふじと青森県で袋掛けしないで栽培されたふじの3種類(王林,岡山ふじ,青森ふじと呼ぶ)を供試して,収穫時期とリンゴ表面の色調,果肉硬度および糖度との関連について調べ,さらに分光反射特性を利用し,特定波長の分光反射率を説明変数にして,果肉硬度,糖度の推定を行った.
 王林リンゴの果肉硬度は,表色系のb,b*値、色相H及び黄色度YIと高い相関関係があることが判明した。表色系の中b値,b*値,黄色度YIの増加にしたがって,果肉硬度が減少した。王林の場合は黄色が増すほど熟度が進み,熟度が成熟期を過ぎると果肉硬度が減少し軟らかくなる過程を表していると考えられる。一方,表色系の各数値と糖度と高い相関関係がなかったが,Lab表色系のa値と色相Hを使って,統計分析の結果,a値の減少とHの増加によって,糖度は減少する傾向が見られた。
 近赤外域の波長の中で,波長760nmの分光反射率は,王林リンゴの果肉硬度と高い相関関係が見られた。また,糖度と近赤外域の分光反射率とは,860, 982, 1071, 1200,1268nmの波長の分光反射率を用いた重回帰の結果,推定糖度と実測糖度との間に高い相関関係がみられた。
 岡山ふじについては,XYZ表色系のX値は果肉硬度の増加にしたがって,減少する傾向が見られた。Lab表色系のa値と黄色度のYIは,その値の増加にしたがって,糖度が増加する傾向がみられた。青森ふじについては,果肉硬度と表色系の数値との間に相関関係がなかった。
 両ふじリンゴについては,近赤外域の波長における分光反射率と果肉硬度とは関係がみられなかった.しかし,糖度と近赤外域の分光反射率とは,760, 860, 1071, 1200, 1268, 1456nmの各波長の分光反射率を用いての重回帰の結果,推定糖度と実測糖度との間に高い相関関係が見られた。
 以上の結果により,リンゴの外観と分光反射率から,損傷部の検出,果肉硬度・糖度を推定する方法を明らかにし,非破壊でリンゴの品質を評価する方法を確立した。