サツマイモ苗の挿し木及び灌水作業の自動化のための画像処理技術

サツマイモ苗の挿し木及び灌水作業の自動化のための画像処理技術

山家 俊哉

1. はじめに
 サツマイモは食糧、環境保護植物などに利用される他用途植物である。現在、サツマイモ苗の植物工場をつくり、苗の育成を大量に行おうとしている。本研究は、その大量生産のために欠かせない挿し木や、育成のための灌水作業を自動化するための画像処理技術の開発が目的である。

2. 実験装置及び方法
 まず、サツマイモ苗の基本的な物理量を調べ、挿し木の切断点の検出をするために、モノクロカメラで画像をビデオにおさめる。そのおさめたビデオから、パソコンに画像を入力し、Winroofという画像処理ソフト使い、切断点の検出を行う。切断点決定アルゴリズムは、まず原画像を読み込み、2値化、ノイズ除去、細線化、オープニングを行い、細線化画像からオープニング画像をひいて、葉の除去を行う。次に、平均化フィルタを使い主茎と葉柄の分岐点をだす(※)。ここではまだ正確にその位置がでていないため、さらにグラディエントフィルタを用いて、主茎と葉柄を分離し、ノイズ除去によって、葉柄を除去する。そして残った主茎部分と(※)の画像の論理積をとって、節の部分を検出する。その検出した点をパソコンで計算して、候補点を出す。(図1)


図1 切検出された切断点の例

 次に、灌水作業の自動化のために、トレイ(60×30p)(10×5個の穴)に育てた苗を、前と同じモノクロカメラでビデオにおさめる。その際、フィルタは5種類(500,550,670,850,970nmの干渉フィルタ。なお光の飽和を防ぐため、550は50%、850は25%、970は30%のNDフィルタを組み合わせて使う。これらのフィルタは、苗の分光反射特性を考慮に入れたものである)利用した。そしてWinroofで濃度特徴量などを解析し、その結果を基に、灌水作業の自動化について考察する。

3. 結果及び考察
 (実験1)について:成功率は90%以上という結果がでた。なお、候補点が集中しているのもについては、節間長が15〜55o、つまり15×1.4=21pixelなので、候補点が20pixel以下に集中しているものは削除できるものとして考えるとうまくいった。さらに成功率を上げるには、葉柄が葉に隠れないように画像入力できるようにしたり、葉柄が残らないようにノイズ処理の部分の改良をする必要があると考えられる。植物工場で実際に使う場合に、トレイから苗を全て切り離して画像入力するのか、トレイに育ったままで、その横から画像入力するのかなどの検討が必要であると考えられる。
(実験2)について:濃度値は夜の方が昼よりも大きな値を示している。それは光の関係で葉が動くためだと考えられる。さらに濃度値をそれぞれ単独で見てもなかなか結果が見えないのでそれぞれの比をとってみると、670/850と670/970(それぞれのフィルタでの濃度値の比)は、苗がしおれはじめる直前まで値が上がっていき、そこからしおれ始めまでいったん値が下がる。この点から考えると、育成する苗のモニタリングも可能なのではないかと考えられる。


図2 トレイを含む苗の質量と濃度値