マニピュレータ衝突時における対象物の検出

マニピュレータ衝突時における対象物の検出

竹國 直隆

1. はじめに
 農業用ロボットの安全システムとして超音波センサや赤外線センサからの情報を基にして,ロボットと人間や障害物との衝突を未然に防止する非接触形の安全システムがこれまでに研究されてきた。本研究では,それらのシステムが何らかの原因で作動せず,ロボットが物体に衝突した場合を想定し,対象物の検出とマニピュレータの対応を検討した。

2. 実験装置及び方法
 本実験では,全長1.1mのアームを有し,モータによって地面と平行に旋回する1自由度のマニピュレータを用いた。旋回中心から1mの位置に対象物を接触させることとし,モータの軸に貼り付けたひずみゲージで負荷を検出した。実験の条件およびマニピュレータの制御方法は次の3種類である。@木などの固定物に衝突した場合,負荷が0になるまで逆転する。A人間に衝突した場合,接触が継続していれば負荷が0になるまで逆転する。衝突後に人間が回避して負荷が0になれば停止を継続する。B物体が倒れかかってきた場合,逆転すれば他の部位に倒れかかる恐れがあるので停止する。なお,垂れ下がった枝などに接触した場合,そのまま旋回を継続する。図1に@からBの対象物と衝突した場合の負荷の変化例を示す。マニピュレータの旋回速度は5.3rpm,負荷のサンプリング周波数は150Hzであり,負荷の累積値が980Nに達した時点でマニピュレータの旋回を停止している。まず,固定物に衝突した場合,マニピュレータの停止後,負荷は一定の値を維持している。人間の場合は,衝突後の対応によって様々な挙動を示す。また,物体が倒れかかってきた場合には,衝突時に負荷はピーク値をとり,その後一定の値に減衰していく。したがって,本実験では衝突後の負荷の変化によって対象物の判断を行うこととした。衝突後の負荷の変動がなければ固定物,衝突時の負荷のピーク値とその後の負荷に差があり,かつ負荷が減衰すれば倒れかかった物体,小さな負荷が連続しておれば枝,それ以外の場合には人間と判断した。

3. 結果及び考察
 図2に人間を対象としたときの結果例を示す。人間がマニピュレータに接触後約0.4秒でマニピュレータが停止した。3秒間のサンプリングを行って対象を人間と判断し負荷が0になるまで逆方向に旋回した。表1に各対象物に対して8回の実験を行った結果を示す。固定物と倒れかかった物体に関しては100%の検出が可能であった。人間の場合,倒れかかった物体と判断された場合が1回あった。その理由としては,人間がマニピュレータと接触した瞬間に離れたため,ピークが生じ,その後負荷が0に減衰していったからである。今後,人工皮膚のようなものをマニピュレータに装着し,接触部位の検出を行えば,さらに安全なシステムが構築できると考えられた。