面状ヒータの特性とそれによる暖房

面状ヒータの特性とそれによる暖房

守時 誠

1. はじめに
 面状ヒータとは,遠赤外線を発生するセラミック粒をコンクリートに混ぜ込んでセラミック層をつくり,そのセラミック層に電気式ケーブルヒータを埋め込むことでセラミック層全体を暖めヒータとしたものである。本実験では面状ヒータを発芽促進の加温用に利用する目的で,面状ヒータの特性と暖房時の効果を調べた。

2. 実験装置及び方法
 面状ヒータの上部にベニヤ板とアングル材で幅113cm,奥行き114cm,高さ66cmの暖房室を作り,ヒータのスイッチを入れた場合にヒータと室内の温度がどのように上がるのか,同様にスイッチを切った場合どのように温度が下がるのかをヒータの特性として計測した。温度センサは熱電対で,これをデータロガーに接続し,四隅の壁から30cm離して図1のようにA〜D地点の4個所,高さを0cm(面状ヒータ表面),ヒータからの距離(高さ)を10cm,25cm,45cmと変えた。次に,その部屋の内部に4つのプラスチックトレイを置き,カボチャの種子を1粒蒔いたポットを各トレイに5個ずつ乗せて発芽試験を行った。プラスチックトレイは0cm,5cm,10cm,15cmと高さを変えて置き,各高さのトレイのポットには熱電対を挿入してポット内部の温度を計測した。

3. 結果及び考察
 温度計測の結果,同じ高さでもA〜Dのどの地点かによって温度に差が出ることが見つかった。この地点間の温度の差は高さ0cmで最も大きく,高さが高くなるにつれて小さくなっていく。さらに,高さ0cmが最も温度が高く,高さが高くなるにつれて温度は低くなるが,今回の実験結果では,高さが10cm以上になると温度の低下は小さくなった。
発芽試験時の温度については,高さ0cm区と高さ5cm区の間では約4℃,高さ5cm区と高さ10cm区の間では約3℃の違いが見られた。高さ10cm区と高さ15cm区の間では温度の差はほとんど見られなかった。発芽数については,高さ0cm区で良い結果が得られたものの,他の高さでは期待していたデータが得られなかった。
 地点間の温度差は,面状ヒータの表面ですでにみられるため,面状ヒータ内に埋設したケーブルヒータに原因があったとみられる。地点間の温度差は高さが高くなるにつれて小さくなり,高さが10p以上になると高低による温度差は極端に小さくなる。このことから,この面状ヒータによる発芽時の暖房を考えた場合,各種子の温度差を小さくする必要性から,面状ヒーターからある程度離して種子をまく必要がある。しかし今回の実験では,面状ヒータの表面温度は約40℃までしか上がらず,高さ45cm付近の温度は約22℃であった。

図1 ヒータと暖房室 図2 高さ別温度変化