土耕内成り栽培用イチゴ収穫ロボットの研究

土耕内成り栽培用イチゴ収穫ロボットの研究(3)
−エンドエフェクタの改造と収穫基礎実験−

岡山大学 近藤 直・久枝 和昇・門田 充司

1. はじめに
 イチゴ栽培は他の作物と比べて労働時間が長く、特に収穫作業は約5カ月間にわたり、作業姿勢が中腰であるため作業者に大きな身体負担を強いている(1400h/10a)。このような収穫作業の労働環境を改善するため、ガントリシステム1)、外成り栽培用イチゴ収穫ロボット2)などの研究が報告されている。本研究は、土耕内成り栽培されるイチゴを対象とし、マニピュレータ、エンドエフェクタ、視覚部、移動機構からなる収穫ロボットの開発を目的としている。本報告では、前報で製作したエンドエフェクタ1号機3)の改造とその収穫基礎実験について述べる。

2. 試作機の概要
 図1 に収穫ロボットの全体図を示す。ロボットは、エンドエフェクタ(吸引ヘッド、開閉部、フォトインタラプタ、リミットスイッチ、カッタ、吸引装置)、マニピュレータ(MOVEMASTER RS-M2(X、Y軸)、直動関節(Z軸))、視覚部(カラーTVカメラ:Panasonic WV-CD2、画像処理ボード:メイコー・マルチアートFBN98)、移動機構(4輪付きガントリタイプ)などから成る。


図1 収穫ロボット全体図

 図2 にエンドエフェクタを示す。エンドエフェクタは1号機に引き続き吸引装置により吸引ヘッド内に果実を捕捉する方式を採用した。1号機の問題点として、1) 果実同士が接している時、その摩擦により果実を吸引できない、2) 果柄が吸引ヘッドの中心に位置している場合、内層筒を回転させても切断できない、3) マルチ押さえが周囲の果実を傷つけるということがあげられた。これらを解決するため、1) 内層筒の形状を約90度凸状にして、地面に接することにより、大きな吸引力を得るようにする、2) 内層筒の回転で果柄を切断できなかった果実を開閉部でもぎ取る、3) マルチ押さえを最小限の寸法にするという改造を行った。また、リミットスイッチを内層筒に装着してエンドエフェクタを下降させたときに畝までの距離を検出した。さらに、内層筒に2組のフォトインタラプタとカッタを取り付け、吸引ヘッド内での果実の検出と果柄の切断を行った。


図2 エンドエフェクタ

3. 果実の収穫方法
 図3に収穫のフローチャートを示す。あらかじめ、カメラから畝までの距離(Z座標)を検出しておき、Aの処理(画像入力、2値化、ノイズ処理、ラベリング、Z座標から果実のX、Y座標を計算)を行った。次に、求めた座標に基づき、収穫作業を行い、収穫作業時に測定した真のZ座標を累積し、その平均値から次の果実のX、Y座標の計算に用いるZ座標の算出を行った。その後、Aの処理を再び行った後、前の画像と比較して収穫成功か否かの判断を行い、マニピュレータの作動領域に果実が無くなるまで繰り返した。入力画像内に果実がなくなると移動機構を移動させた。実験は室内において、「さちのか」を用いて内成りの栽培環境を再現し、収穫実験を行った。


図3 収穫のフローチャート

4. 結果及び考察
 実験の結果、1号機の問題点はエンドエフェクタ各部の改良により解消され、ほぼ100%の収穫率(果実数:11個)を得た。果実に損傷は見られず、果実当たりの収穫時間は約6秒であった。これより、土耕内成り栽培されるイチゴは、吸引式のエンドエフェクタを用いることで収穫可能で、視覚センサの果実の検出誤差やマニピュレータの位置決め誤差を吸収できること、果実との接触を最小限に押さえられること等が確認できた。しかし、約半数の目的果実の収穫時に、近隣の未熟な果実まで吸引、収穫することが問題点としてあげられた。今後は、この問題点を最小限に押さえるための新たな機構、あるいは栽培方法の検討等が必要である。また、収穫時間のさらなる短縮のため、各要素の高速化が望まれる。

参考文献
1) 山下 淳他:イチゴ栽培におけるガントリシステムの実用性、農業機械学会関西支部報、第83号、29−32、1998
2) 佐藤 経明他:イチゴ収穫ロボットの開発、農業機械学会 第55回大会 講演要旨、243−244、1996
3) 近藤 直他:土耕栽培用イチゴ収穫ロボットの研究(2)−エンドエフェクタの試作−、農業機械学会 第57回大会 講演要旨、393−394、1998