収穫ロボットのためのキュウリ栽培様式および品種の検討

収穫ロボットのためのキュウリ栽培様式および品種の検討

岡山大学 近藤直・門田充司・安立光宏
井関農機(株)有馬誠一

1. はじめに
 キュウリ栽培で収穫・調整にかかる時間は、全労働時間の約40%を占める。しかも、ハウス内の収穫作業は、気温30℃以上、湿度90%以上の過酷な条件下において長時間作業を継続する必要があるため、現在図1に示すキュウリ収穫ロボットの開発が進められている。しかし、現行の栽培様式では果実が大きな葉などに隠されてしまうので、現在の収穫ロボットの能力では収穫作業が困難なことが多い。そこで本研究では、キュウリ収穫ロボットが容易に作業可能となる栽培様式および品種について検討した。


図1 キュウリ収穫ロボット

2. 材料および方法
 現在、キュウリは、つる下げ栽培とネットを使う摘心栽培などが主流であるが、このような栽培様式においてはキュウリを鉛直方向に生育させることが多いため、大きな葉で果実が隠される場合が少なくない。そこで本実験では、支柱を鉛直平面から30°傾斜させて、果実の露出程度を増大させることを試み、以下の4つの栽培様式について検討した。@プレート栽培:専用枠(全高1300 mm、外幅200mm、内幅140mm)を使用し、果実のみを畝溝側に露出させる方法、Aつる下げ栽培:慣行法のつる下げ栽培を傾斜させた方法、B摘心栽培:目合い180mmのネットを使い、主枝を約2mで摘心して側枝を2節目が出葉した段階で摘心する方法、C葉無し栽培:主枝先端から5枚の葉、および下部の側枝から出た葉を残し、主枝中央部の葉を全部切り落とす方法。品種は、シャープ1、F-521、KU-385、大仙毛馬の4種類を用いた。計測項目は、果実の露出度、果柄長、葉の寸法、果実の曲がり、収穫量等とした。

3. 結果及び考察
 栽培様式別の果実の露出度を図2に示す。完全露出と上部露出の果実はロボットで収穫可能と考えられる。完全露出していた果実およびそれに上部露出を含めた果実の割合は、プレート栽培で70%および75%、葉無し栽培では80%および90%と高くなった。つる下げ栽培は完全露出が35%と低かったが上部露出の割合が高く、あわせると60%となった。摘心栽培は完全露出が低く、ネットの反対側へ果実が生育したものも多いため、ロボット収穫には適さないと考えられた。果柄長はつる下げ栽培が若干長くなるという結果を得た。果柄が長ければ収穫ロボットが果柄を切断するときに有利であると言える。また、葉の寸法については摘心栽培が小さくなった。果実の曲がりはつる下げ栽培が最も小さく、葉無し栽培,摘心栽培で大きくなった。その理由として、葉無し栽培では葉を数多く切り落としたため、ストレスが大きく、生理的障害が見られたものと考えられた。摘心栽培では果実がネットにひっかかり、物理的に曲がったものと考えられた。


図2 各栽培様式による露出度

 図3には、栽培様式別の収穫量を示す。これは各5株、7月中に収穫した果実の質量で表している。これより、側枝に数多くの果実を生育させた摘心栽培が最も多くなった。続いて、つる下げ栽培、プレート栽培の順であった。葉無し栽培はつる下げ栽培に比べて50%以下と激減した。葉無し栽培は、果実の曲がりおよび収穫量の点から、栽培様式として不適と考えられた。これらの結果より、以上の4つ栽培様式の中では,プレート栽培が収穫ロボットの栽培様式に適すると考えられるが、つる下ろし作業のたびにプレートを移動させる必要があるため、さらに工夫が必要であろう。


図3 各栽培様式による収穫量

 図4には品種別の果柄長の結果を示す。これより、KU-385が特別に果柄が長く、果柄を切断する必要のある収穫ロボットにとって有利になると考えられる。葉の寸法に関しては大仙毛馬が小さくなった。果実の曲がりは、大仙毛馬が最も大きかったものの、その他の品種は大差なく、収穫量はシャープ1が最も多くなった。これらのロボット収穫にとって有利となる特徴を品種改良等により組み合わせれば、収穫ロボットの実現性が高くなると思われる。



図4 各品種による果柄長