ニューラルネットワークと画像処理を用いたイヨカンの糖度,pHの推定

ニューラルネットワークと画像処理を用いたイヨカンの糖度,pHの推定

岡山大学 近藤 直・門田充司・鳥羽 慎司

1. はじめに
 青果物の選別は,ほとんど外部品質(質量,形状,着色の度合いなど)による評価に依存しており,内部品質(糖含量,酸含量など)による評価は,特別な青果物を除いては行われていない。外部品質だけでなく,内部品質の評価も可能となれば,消費者のニーズに合った生産物を提供できるとともに,商品価値を高めることも可能である。そこで本研究では,同一の圃場で収穫されたイヨカン30個を対象とし,画像処理とニューラルネットワーク(以下ニューロと称す)によって,その内部品質である糖度,pHの推定を,非破壊で自動的かつ高速に行うことを目的とした。

2. 実験装置及び方法
 一般に「イヨカンは,赤い色,扁平な形状,中程度の寸法,滑らかな果面を有する果実が糖含量が高い。」と言われている。従って,内部品質と関係が深いと思われる果実外観の特徴として,果実の色,形状,寸法,果面の粗滑を取り上げた。これをコンピュータが扱えるデータとするために,画像からR/G,フェレ長比,テクスチャー特徴量を抽出すると同時に質量を計測した。また,別途,果実の径を計測し,果面の粗滑の程度を目視により4段階に評価した。今回は,果面の粗滑を数値化するためのテクスチャー特徴量として,同時生起行列から得られるASM(一様性)を用いた。画像入力には,色温度5500Kのランプ,カラーTVカメラ,画像処理装置を用いた。糖含量は屈折式糖度計を用いて糖度を計り,酸含量に対応するデータは,ガラス電極法を用いたpHメータで計測した。
 図1に,計測された各特徴量と糖度との関係を示す。これより,相関は低いものの,前述した外観と糖度との関係が若干ではあるが見られる。さらに図2に示すニューロを用いて糖度,pHの推定を行った。ニューロの学習にはカルマンニューロトレーニング法を用い,その教師データには,入力データを4段階と10段階,出力データを5段階と10段階に正規化したものを組み合わせて使用した。学習回数は500回を上限とし,途中で学習が終了したものや,過学習となるおそれのあるものは,途中で学習を停止させた。


図 1 各特徴量と糖度との関係


図 2 ニューロの構造


3. 結果及び考察
 図3および図4に,ニューロによる糖度,pHの推定結果を示す。これより,単独の各特徴量と内部品質との相関は低いものであったが,総合的に非線形性の関係を取り扱えるニューロでは内部品質の推定の可能性が示された。入力データは10段階よりも4段階の方が,出力データは10段階よりも5段階の方が,推定の精度が高くなった。また,今回用いたASMと果面の粗滑との関係は必ずしも高いものでなかったことから,入力因子にASMを用いると,推定の精度が落ちた。今後は,果面の粗滑とより高い相関をもつテクスチャー特徴量の抽出が望まれる。また,さらには,果実の形状を記述できる別の特徴量の検討も望まれる。



図 3 ニューロによる糖度の推定


図 4 ニューロによるpHの推定