農業用ロボットの安全性に関する基礎研究

農業用ロボットの安全性に関する基礎研究
―マニピュレータの制御―

鐘ヶ江 修司

1. はじめに
 近年,ロボットの進歩は著しいものがあり、将来的には農業の分野にもロボットによる完全自動化の時代が来ると考えられている。しかし、現在の技術から判断するとその前の段階に、人間とロボットが隣接した場所で協調作業を行うという環境が想定される。その場合、作業の安全性と効率性を考慮したロボットシステムが必要となってくる。本研究は、センシングシステムから得た人間の情報と危険度関数によるロボットの制御実験を行った。

2. 実験装置及び方法
 本センシングシステムは,30°間隔に固定した10個の赤外線センサと,ステッピングモータによって180°旋回する4つの超音波センサを用いた。農作業用ロボットとしてブドウ管理用ロボットを用いた。センサの配置は図1に示す。実験方法は、ロボットのアームを100mm/sで等速直線運動させ、協調作業を想定してロボットに人間を近づかせる。ブドウ農園においての人体の検出は,木や柵などを人体を区別することが必要である。人間検出の方法として、まず人間の存在しない圃場で超音波センサを走査し距離情報とステッピングモータの旋回角度の情報をもとに背景のマップを作成する。赤外線センサが,人間の存在を検知すると,人間と背景の情報から背景を除き人間だけを抽出させる。そして、1回の走査ごとに得られた情報を塊状認識し人体の位置,ベクトルを求めることとした。その情報をもとに、あらかじめコンピュータシュミレーションにより得られた危険度関数を用いて危険度を算出した。危険度によってロボットのアームの速度を4段階に変化するようにロボットを制御した。全体の流れを図2のフローチャートに示す。





3. 結果及び考察
 実験結果の一例として図3にロボットのアームの前を横切った場合の、人間検出と制御の結果を示す。周りに支柱やブドウの木があるにも関わらず,人間の動きを検出することが可能だった。しかし,超音波センサの持つ指向性や超音波の反射する場所の違いなどからベクトルと位置に誤差を生じた。計測時に得られた、人間の位置とベクトルを用いた危険度関数でのロボットの制御が可能であった。今後は,指向性が鋭く、検出時間が短いセンシングシステムの開発と,減速,停止だけでなく,回避などの動作を取り入れた,よりきめ細やかなロボットの制御を行う。また人体に対しての安全性だけでなく,ロボットに対する安全性を検討する。