国内の消費動向が量から質に移行しているなか、農作物の選別作業はより重要なものとなっている。主要作物の選別の自動化が確立されているのに対して、アオネギの選別作業は,すべて人力に依存しているのが現状である。アオネギ生産者は選別作業に多大な労働力と時間を費やすため、ほとんどが小規模経営を余儀なくされている。本研究ではアオネギの選別の中でも階級選別に着目し、アオネギの選別システムの一環を担うことを目的とした。そこでアオネギの全長計測を行うための実験装置の試作及び基礎実験を行った。
アオネギの全長を計測するセンサと実験装置の決定を行うために、岡山県産のアオネギ150本をサンプルとし、アオネギの曲がりについて調べた。調査項目は図1に示すように、全長、曲がり、曲がりを含めた長さL'とした。図2に全長とL'との関係を示す。階級選別は図中に示したようにM、L、LLの三段階で行われており、また20mm前後の誤差は許容範囲内とされている。そこで曲がりを無視して全長をL'として計測することにした。
実験装置はコンベヤ、センサ部、光源、パソコンで構成され、その概略図を図3に示す。コンベヤは、400mm以下のネギが存在しなかったため幅390mm、また連続的にネギを計測できるように全長2000mmに設計した。ネギの先半分は、等間隔で張った摩擦の少ない糸で保持し、スムーズに移動できるようにした。センサ部にはフォトトランジスタを使用した。フォトトランジランジスタは光量に応じてアナログ電圧を出力するので、センサを照射する光を物体が遮断する時の電圧降下を測定した。その電圧変化にしきい値を設定することによって、物体の検出を行った。これを32個用い、誤差の許容範囲内である20mm間隔で直線上に並べて、1000mm前後のネギでも計測できるようにした。センサを照射する光源には、全長1198mm、32wインバータ蛍光灯を使用した。
またAD変換・デジタル出力インターフェイスボードをパソコンに接続し、センサからのアナログ信号をデジタルに変換して入力するとともに、センサ回路内のマルチプレクサにデジタル信号を出力させ、アナログ1チャンネルにつき8つのセンサの信号の入力を行った。
試作した実験装置を用いて、アオネギの全長の測定を行った。なおネギの根元はコンベヤの端に揃えて測定した。
ネギの先端は直径約1mmで、曲がりの状態によってはセンサとの距離が50mmくらい離れることもある。ネギをセンサから50mm離した状態と、距離0で隣接させたときのネギの直径と電圧との関係を図4に示す。
これにより、ネギの先端の検出には87%のしきい値が必要なことが分かった。しかし、コンベヤの振動等からセンサが誤動作を起こすので、しきい値を80%として測定を行ってみた。24本のネギについて10回ずつ計測した結果、先端の検出率は78%であった。検出率を向上させるためには、ノイズとネギの通過を識別させることが必要であった。そこでネギの通過時に各センサが連続的に反応することを利用し、まばらに反応したセンサはノイズによるものとして、ノイズとネギの通過とを区別することとした。これによりしきい値を88%まで上げることができた。そのしきい値で計測した結果、検出率99%を得た。ネギの先端の検出に失敗したのは、ネギがセンサを通過する直前に先端付近のセンサが拾ったノイズを連続データとして誤認識したときのものであった。本実験の結果より、試作した実験装置でアオネギの全長の計測が可能ということが分かった。