題目

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岡山大学 芝野保徳・近藤 直・門田充司・中司憲持

Keywords:ロボット,安全性,人体検出,赤外線センサ,超音波センサ

はじめに  近年、多くの研究機関において農業用ロボットの開発が行われている。しかし現在の技術から判断すると、ロボットの完全な自動化の時代までには人間とロボットとが同一圃場内で協調作業を行う段階が存在すると考えられる。つまり人間の判断や技術がどうしても必要な作業は人間がロボットと隣接した場所で行うといった環境が想定される。そのような環境においては人間にとって非常に危険でありロボットの安全性が重要な課題となる。

安全システム  工業用ロボットの安全対策として、ロボットの周囲を柵で囲み作業領域に人間 が侵入すると完全停止させるという方法 が一般的に用いられている。しかし農業 用ロボットは圃場内を自走することが多く、その方法は現実的であるとは言えな い。また、ここで安全性と共に重要な要因の1つとして作業効率が挙げられる。 障害物が存在するたびにロボットを完全 停止させる方法は最も安全であるが作業 効率の面では最良の手段であるとは言えない。よってロボット自身が周囲の状況を判断し危険を回避するようなロボットシステムが理想であると言える。そこで本研究では、その様な安全かつ効率的なロボットシステムを最終目標に、そのセンシングシステム部の基礎研究を行った。

。 実験装置および方法  本センシングシステムは,それぞれ4組の超音波センサ赤外線センサおよびそれらを旋回させるモータから構成されており、その周囲360°の検出が行える。 超音波センサについては障害物(人間)の位置、および人間の移動速度・方向の検出を行う。センサからの距離情 報およびモータの旋回角度から算出した検出点をエリアマップに投影すると、右図の1番に示すように対象物の輪郭 が得られる。本研究では塊状認識の手法を用い、それぞれの検出点に対して一定距離内に他の検出点が存在すればそれらを1つの塊としてみなし、それ以外をノイズとして消去し た(2番)。さらにそれらの座標の平均値を対象物の代表点(位置)とした(3番)。この代表点およびモータの旋回角度を逆算することにより移動物体の速度と方向が算出できる。

また赤外線センサについては人間の存在の確認を行う。赤外線センサは人体の放出する波長の赤外線 を通過するフィルタを装着しており、人間を検知するとアナログ出力電圧に変化が生じる(右図1番)。センサを同一背景で旋回させた場合その出力波形には再現性が見られるので、あらかじめ1周分の背景のデータを取っておき、その波形に対する出力電圧の変化から人間の存在と方向を検出する(2番)。さらに出力電圧差の変化を旋回角度で微分し、そのピークを抽出することで小さな変化も検出できる(3番)。実験は静止状態および等速移動する人間に対し、それぞれセンサからの距離を変化させて行った。

「 結果及び考察   実験結果の一例として、下左図に移動中の人間に対する超音波センサの検出結果、下右図に静止した人間に対する赤外線センサの検出結果を示す。超音波センサによっておおまかな人間の移動が検出されたが、センサの指向性や超音波を反射する人体の部位の違いなどから誤差が生じた。静止状態の人間に対しては良好に検出できた。赤外線センサに関しては、静止した人間の存在および方向が検出できたが、移動中の人間はセンサとの距離が大きな場合、またセンサの旋回方向と人間の移動方向が一致した場合などは検出が不安定であった。よって固定した赤外線センサとの併用が望ましいと考えられた。今後、レーザ距離計などの指向性の鋭い距離センサを用いればセンシングシステムの精度が向上できると考えられた。さらに、センシングシステムで得られた情報から危険度を算出し、ロボットの動きを制御する安全システムに発展させる必要がある。

   

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