岡山大学 毛利建太郎・難波和彦・高尾明秀
Keywords : 三次元ジャイロ,累積誤差,ラジコンヘリ
現在,多くの農作業で機械化がなされ,さらに自動化されているものも多い。近年,ラジコンヘリは,農薬散布や播種等に利用されているが,操縦には高度な技術や熟練が必要とされ,飛行の自動化が望まれている。飛行を自動化するには,まず自己位置の検出が必要となる。一般的には地上を走行する作業機の場合は,距離データである車輪の回転数を積算する方法で行われているが,空中を移動するラジコンヘリには,この方法は使えない。
そこで,本研究では加速度センサによる移動体の自己位置の検出を目的として,基礎研究を行った。
本実験で使用した姿勢計測装置は,センサユニットとプロセッサユニットからなっており,ロール,ピッチ及びヨー角の角度とX,Y及びZ軸の3方向の加速度を出力する。この装置からの角度・加速度データはRS-232Cを通じて,30Hz周期でデジタル出力される。距離は,加速度を方位データにより絶対座標に変換して,積分することで求められる。実験は,@X軸方向に単振動させた場合。A水平な直線上を移動した場合。B勾配のある直線上を移動した場合。Cトラック上を水平に移動させた場合。D水平面で自由に移動させた場合。以上5通りの実験で加速度センサの基本特性と実際の移動体の位置検出を試みた。
実験1 | 約3Hzの周期で装置を単振動させた場合の結果を図1に示す。静止時には約±0.5m/s2,移動時には入力加速度の約±10%の誤差が生じており,補正を行うことによって十分な精度が得られることが分かった。 |
実験2 | X軸方向に水平に移動させ,X軸加速度のみで計測した結果を図2に示す。実際に移動した距離は1.95mで,計算値1.93mという結果が得られた。 |
実験3 | 高低差をつけてX軸方向に移動させて,X軸加速度とZ軸加速度及びピッチ角度で計測した。図3に軌跡を示す。X軸加速度とZ軸加速度をそれぞれ水平成分(X軸方向)と垂直成分(Z軸方向)をピッチ角度により分解し,それぞれの成分を積分した。その結果,実際に移動した水平距離は2.80m・垂直距離は0.15mで,計算による水平距離2.77m・垂直距離0.14mという結果が得られた。また軌跡も実際の位置座標をよくトレースしていた。 |
実験4 | 進行方向に対し,センサユニットのX軸が,常に同方向になるように平面上のトラックを移動させた。この方法ではX軸加速度をヨー角により成分分解して,距離データを算出した。この場合の軌跡を図4に示す。実際に移動した軌跡と計算上で求めた軌跡を比べると,旋回部で少し軌跡がずれたが,動きが単純であったために,良好な位置検出を行うことが出来た。 |
実験5 | 実験4と同様に水平面を自由に移動させ,X軸加速度とヨー角で計測した。軌跡を図5に示す。走行パターンはある程度,再現することが出来たが,位置検出には十分な精度が得られなかった。実験4よりも複雑な動きをしたために,加速度や角度に誤差が生じた箇所があり,これらの誤差が次第に累積され,軌跡の大きなずれとなったと考えられる。 |
今回のように短時間の実験なら,比較的簡単な補正方法で,ノイズを消去し,良好な自己位置検出を行うことが出来た。実際のラジコンヘリによる農薬散布等の飛行パターンは,機体を同方位に保ったまま前後左右に移動するものである。この場合,実験Dのように急激な角度変化を伴うことはなく,大きな誤差は生じないものと思われる。したがって,加速度センサでも単純な飛行パターンであればラジコンヘリの自己位置検出が可能であると考えられた。
今後の課題は,実際に長時間移動し複雑に振動するラジコンヘリで,正確な位置検出が出来るかどうか検討したい。