リーフレタスの光応答特性の温度による影響

Effect of Temperature on Light Response Characteristics of Leaf Lettuce

吉儀智也

1. はじめに
植物工場では,光や温度などの環境条件を制御することで天候に左右されない安定的な作物生産が可能となっている。一方で,生産性向上や生産コストの削減は依然として大きな課題である。特に完全制御型では人工光源のコストが大きいが,光を有効利用する観点での環境制御はまだ行われていない。光合成の最適化には光,CO2,温度といった複数の環境因子を的確に制御する必要があるが,相互関係もあり容易ではない。本研究では温度に注目し,点灯および消灯といった光への応答を明らかにするために,光合成量としてCO2濃度の時間的変化を測定し,その特性を検討した。

2. 装置および方法
実験はリーフレタス(チマサンチュ)を供試し,光源付き恒温器(EYELA,MTI-1000)内に18–26 °Cで2 °Cごとの5温度区を設定し,光量(PPFD)約50 µmol m−2 s−1,CO2濃度約400 ppmで水耕栽培した。光合成量は,リーフレタスを密閉容器内に設置し,送風ポンプとチューブを用いて一定流量で通風を行いながら,入口および出口のCO2濃度をワイヤレスCO2ロガー(宝産商,TKR04A)で3 s間隔で計測し,その差分と通風流量の積から求めた。計測には本葉が5,6枚展開している個体を,1温度区1株ずつをローテンションしながら測定を実施し,個体差の影響を低減した。計測値は近似式によりモデル化し,点灯および消灯に伴うCO₂濃度変化の経時変化を解析した。

3. 結果および考察
Fig. 1に,消灯,点灯に伴うCO2濃度変化を示した計測データの一例を示す。
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Fig. 1 Example of measured data
点灯時250 ppm程度であったものが,消灯(図中OFF)に伴い急激に濃度が高くなり50 minほどで580 ppmに達した。供給空気のCO2濃度が400 ppm程度なので,差分の180 ppmが個体の呼吸によるものといえる。この値は概ね温度が高くなるほど大きくなり,呼吸量の増加が観察できた。一方,点灯(図中ON)に伴いOFFの場合とは逆に,CO2濃度は徐々に低くなり80 minほどで250 ppmになった。供給空気との差分150 ppmがみかけの光合成によるものといえ,これは20 °Cで最大となった。呼吸分も考慮した真の光合成量を時間あたりのCO2量としてFig. 2に示す。 F2.jpg
Fig. 2 Comparison of photosynthetic rate
この値も20 °Cで最大となった。チマサンチュの生育適温は18–23 °Cとされており,今回の結果はその中間付近となった。ここで光の有効利用に注目すると,点灯時にはなるべく早くその時の最大光合成量に到達する方が有利であり,逆に消灯時にはなるべくゆっくり推移すればそれだけ光合成が長く継続したといえる。そこで,この期間の変化速度を解析するために,点灯時には呼吸量を0,最大光合成量を1と正規化してその変化を近似し,全てがほぼ1に近くなる40 min間の光合成量を積算した。この値と,最初から1であったときの積算値との割合を利用効率(%)として求めた。100 %に近いほどより応答が早く,光を有効利用したといえる。消灯時にはその逆で計算した。その結果,Fig. 3に示すように点灯時には20 °C区がやや低く,消灯時には高い傾向があったが,温度区ごとでの有意差は認められなかった。 F3.jpg
Fig. 3 Light use efficiency during lighting ON and OFF
このことから,今回の温度範囲における光の点灯,消灯に対するチマサンチュの応答速度は同程度であったといえる。
今後は光量や供給CO₂濃度も考慮し,光応答特性に基づく光エネルギーの省エネルギー型の環境制御への応用可能性を検討したい。