選果直後の蛍光画像を用いた千両ナスの水分損失予測
山本大喜
1. はじめに
千両ナスは岡山県のブランドナスで,見た目の良さ,色の落ちにくさなどから全国で高い評価を得ている。ナスは劣化に伴い果皮が硬くなり食味が低下するので,高品質のナスを全国の消費者に届けるには選果段階でその後の水分損失を予測し,それに応じた流通を行う必要がある。過去の研究から水分損失に伴い蛍光が強くなることが明らかになっている。本研究では水分損失の予測を選果直後の蛍光画像から行うことを検討した。
2. 装置および方法
JA備南の選果場にて最上級の「カク」と選果された千両ナスを対象とした。12月から翌6月まで毎月計測を行い,20 ℃の保存環境で選果日から4日後まで(Day 0〜4とする)毎日の蛍光画像を撮影し,質量を計測した。また,果実の蛍光波長の詳細を明らかにするためにDay 0,2,4のEEM(励起蛍光マトリクス)を計測した。蛍光画像撮影は365 nmの紫外線LEDを光源とし,暗室内にてデジタルカメラ(Canon EOS R10)で行った。
3. 結果および考察
図1に水分損失率の異なる2つのナスの経時変化を示す。

図1 経過日数と水分損失の関係
日数経過に応じて直線的に変化したので直線で近似を行い,高い寄与率を得た。しかしDay 0の水分損失は0ではなく,それぞれの個体固有の切片が生じた。水分損失と蛍光は収穫直後から発生しているので,この切片は計測までの時間経過によるものだと考えられた。また直線の傾きは水分損失速度を表すが,一様ではなく個体によって異なった。ここで水分損失が小さい個体に注目すると,Day 0での蛍光の様子が異なるようであった。そこで,EEMを解析した結果,水分損失の少ない個体では420〜520 nmに波長ピークが見られた。これは青緑の色味に相当する。一方で水分損失に伴う変化は400〜470 nmの波長で,これは青紫の色味に相当する。これらの色味をRGB値の比で表現し,水分損失近似直線の傾きと切片との相関を調べたところ,それぞれ強い相関があったので,傾きと切片を色情報から算出する近似式を求めた。
(1)
(2)
ここで,aは水分損失近似直線の傾き,bは切片,R,G,Bは蛍光画像の色情報である。経過日数をdとして水分損失WL(%)は次式で求めた。
(3)
予測結果のRMSEは2.22となり,水分損失予想が十分可能であった。予測精度は季節間差異があり,全体的に水分損失が小さくなる4〜6月ではRMSE1.67で予測できた。
以上より,現状の画像を用いた選果システムに紫外線光源を導入するだけで,これまでにない水分損失という新たな品質評価基準を提供できることが明らかになった。