培養温度がキクラゲ菌床呼吸量の経時変化に与える影響
Ripeness Estimation of Grape ‘Shine Muscat’ Using Image Measurement
魚住奈々子
1. はじめに
‘シャインマスカット’は良好な食味と優れた栽培特性から全国的に人気を博している。本品種は黄緑色の果皮を特徴とするが,紫色のブドウなどに比べると成熟に伴う外観色の変化が小さいため,目視による熟度判断は難しい。現場では収穫の判断に専用の5段階カラーチャートなどが使われているが,わずかな熟度差を見分けるのは難しく,作業者の主観に頼った判断が行われている。そこで本研究では,画像計測による客観的な熟度推定を検討した。
2. 装置および方法
岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターで栽培された‘シャインマスカット’を対象に,主幹から枝先まで等間隔に設定した3か所から各2果房,計6果房を供試した。調査期間は2025年9月16日から12月8日までの84日間(Day 0–83とする)で,計12回計測を行った。各果房最上部の果粒を測定対象とし,質量,糖酸度計(ATAGO,PAL-BX/ACID2)による物理量計測,および色彩色差計(MINOLTA,CR-300)による果頂部の色情報の記録を行った。画像情報は,暗室内でカメラ(Canon,EOS R10)を用いて果頂部を撮影し取得した。光源には白色LEDを用いた。画像解析は,背景を削除して得た果粒領域からRGB値を取得し,RGB比およびL*a*b*値を算出した。
3. 結果および考察
期間中,質量はほとんど変化しなかった。糖酸度はどちらも一定の値まで増加したのちほとんど変化しなくなった。上昇時には糖度の方が単調に増加したので,熟度推定の重要な手がかりになると考えられた。画像情報として,Fig. 1にDay 0およびDay 83の果粒の例を示す。

Fig. 1 Change in respiration rate at 26 °C
各計測日間での色差は小さかったものの,Day 0とDay 83を比較すると果皮が緑から黄緑色に変化することが目視でも確認できた。また,色彩色差計で計測したa*値は負の値で,日数経過に伴って0に近づいた。a*値は負の値が大きくなるほど緑が強いことを表すので,日付とともに緑色が減少したことが数値としても確認できた。ここで,画像から算出したa*値をFig. 2に示す。

Fig. 2 Relationship between culture temperature and maximum respiration rate
2次曲線で近似を行ったところ,色彩色差計での計測結果同様に精度良く算出できた。画像でも計測が可能であったので,ほ場や収穫直後での熟度推定もカメラがあれば容易に可能になると考えられた。また,その他色情報についてもモデル化を行ったところ,特にR比,G比で精度良くモデル化でき,a*値,R比,G比が特に熟度推定に有用な指標であることが分かった。そこで一例として,決定係数が最も大きいG比を用いて熟度推定を行った結果をFig. 3に示す。

Fig. 3 Cumulative respiration amount at 1,200 °C d of accumulated culture temperature
一般にブドウは主幹から遠い果房から熟すとされているが,今回の結果でも枝先の色の変化が最も早く,例えば糖度24 Brix%時の平均的なG比0.492に達するのは,枝先でDay 35,主幹付近ではDay 51であった。このように,よく管理された樹の中でも場所による熟度の違いは小さくないため,作業者は果房ごとに収穫タイミングを見極めなければならない。今回,画像計測によって色差の定量化および熟度の客観的な数値化が可能となり,食味や流通などの目的に応じた適切な収穫時期を判断できる可能性が示された。また,糖度の増加が飽和した段階以降においても果皮色の変化が認められたことから,画像計測による色情報は,成熟後期においても熟度推定に有用な指標になり得ることも分かった。今後の展望としては,異なる年度や樹でのサンプリングによるデータセットの拡充およびモデルの汎用化と,果房内での熟度のばらつきや実環境での撮影を想定した考慮した熟度推定の検討が必要であると考えられる。