ブドウ‘オーロラブラック’の生体情報による収穫適期の推定

SUN RUORAN

1. はじめに
オーロラブラックは,酸味が少なく濃厚な味わいと高い糖度が特徴の,岡山県で品種改良されたブドウである。日持ちが良く脱粒しにくいことから,長距離輸送向きで特に海外進出も狙える次世代のブドウとして期待されている。本研究では,現場で必要とされている収穫時期の予測を目的として,糖度や色などの生体情報の定期的なサンプリングによって熟度の変化を過熟まで追跡し,変化のモデル化を試みた。

2. 装置および方法
岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターのガラスハウス内で栽培されている,樹齢12年の果樹を対象とした。灌水はタイマーで行われ,果実は袋掛けせずに栽培されている。サンプリングは,WH型仕立ての6本の各枝等間隔に18か所の房について2週間に1回行い,毎回それぞれの果房の最上部に位置した果粒を用いた。期間は2023年と2024年の6月から10月で,2024年は別の樹についても生体情報を過熟まで追跡した。色情報はL*a*b*表色系を色彩色差計(MINOLTA,CR-300)で,品質情報は糖度と酸度をブドウ用糖酸度計(ATAGO,PALBX/ACID2)で計測した。
3. 結果および考察
糖度はいずれの年,樹,枝でも6月から漸次増加し,20 Brix%を超えた8月下旬から上昇が緩やかになり,最終的に約24 Brix%という高い値となった。20 Brix%が収穫目安の一つとされているので,8月の下旬には収穫時期を迎えていたと言える。酸度は8月初旬に下がりきりその後変化しなくなったので,熟度の指標には不適だった。色は明るい緑色から,赤色を経て,暗い紫色に変化した。7月に緑色のまま色が変わらない時期があったが,この時期を除けば糖度と色情報には高い相関があるので,色情報から非破壊で収穫目安の糖度に達した果実を判別することは可能であった。
つぎに,変化が安定的であった糖度を次式でモデル化し,収穫日の予測を試みた。
Eq1.jpg   (1)
ここで,Sは糖度(Brix%),SMaxは糖度の最大値,kは曲線のひずみ,dは経過日数(日),d0は曲線の中央日(日)である。この式を枝や樹ごとに適用した結果,近似を良好に行う事ができた(図1)。係数に注目すると,S_Maxは枝により若干異なったが,この値が収穫予想日に与える影響は小さかったので,品種ごとに取り得る最大値を設定して定数とすれば良いと考えられた。kやd_0はその年の日照などの気象条件の影響を強く受けるので,毎年の数日間のサンプリングで決定する必要がある。この際の糖度は色情報から推測可能なので,現場で撮影した画像から収穫日予測が可能である。
Fig1.jpg
図1 糖度変化のモデルの例