ブドウ‘オーロラブラック’の熟度判定に関わる果房内糖度分布の計測

Measurement of Distribution of Sugar Content in Grape Cluster in Determining Ripeness of Grape ‘Aurora Black’

近藤暉

1. はじめに
ブドウなど一房が多くの果実で構成される青果物では,品質評価や生育調査の際にどの部位に注目すべきかが問題となることがある。当研究室で取り組んでいる‘オーロラブラック’の樹上での画像計測でも,果粒ごとに色や形の違いが観察されており解決すべき課題であった。そこで本研究では,果房内の注目部位を明らかにするために,全ての果粒の果房内位置,糖度,色情報を定期的に計測した。

2. 実験装置および方法
岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターのガラスハウスで栽培されている,樹齢12年のダブルH型仕立て果樹を計測対象とした。期間は2024年7月31日から9月24日で計6回のサンプリングを行った。果房内の全ての粒(n=38~48)で糖度と色情報を計測し,果房内位置を記録した。糖度はブドウ用糖酸度計(ATAGO,PAL-BX/ACID2)で,色情報はL*a*b*表色系とし色彩色差計(NINOLTA,CR-300)で果頂部を計測した。

3. 実験結果および考察
Fig. 1に8月21日の果房の画像例を示す。すでに収穫時期を迎えていて,この果房も全体的に紫色になっているが,色づきが遅れている果粒があり,上部と下部では異なる色味である。この画像からも果房内での分布のばらつきが推察される。この日の糖度分布をFig. 2に示す。果実の位置を明確にするために果粒を副穂ごとに分けて,その平均値で表した。この日のサンプルは副穂ごとに1から6個の果粒で構成されていて,副穂内でどちらが上の位置であるかなど区別が難しい反面,副穂の位置は確定的である。若い数字が上方であることを示し,副穂の合計は12であった。一般にブドウの糖度は果房上部ほど高く,下部になるほど低くなるとされている。このブドウでもその傾向はあるが差はあまり大きくなく,1 Brix%程度であった。一方,副穂番号5,8,10番のようなばらつきでの差の方が大きい場合もあった。点線は近似直線で,この線に近い点ほど平均的な数値であったといえる。中央の7番は数値的にもほぼ平均値であった。同様に色情報(b*値)の結果をFig. 3に示す。この値は正の数値が大きいほど黄色,負であるほど青色であることを示し,このブドウでは熟度が進むほど0に近づく。上部ほど色の熟度が進んでいると言え,上下で4 程度の差があった。糖度と同様7番は平均的な値となった。また,8番のようなばらつき部分では糖度も低く,熟度が遅れていることを計測できていた。
このばらつき部分の分布を確かめるために,房を上中下の3部位に分割して,平均値から標準偏差の2倍以上離れている果実数を計測した。その割合は上中下ほとんど変わりなく,ばらつき部分は房のどこでも存在することが明らかになった。実際に現場で樹上の果房を撮影することを想定すると,一つ一つを真横から大きく捉えることは手間がかかり難しい。下方から見上げるように全ての果房を連続的に撮影する場合を考えると,果房の一部の情報を捉えることになる。特に経時変化を観察する場合は,上下に糖度の差があることを考慮して,同じ部位を計測することが大切であることが分かった。

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Fig. 1 Example of grape cluster image

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Fig. 2 Distribution of sugar content in grape cluster

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Fig. 3 Distribution of b* in grape cluster