千両ナス蛍光特性の収穫後の経時変化

Florescence Characteristics of Eggplant ‘Senryo’ after Harvested

山本大喜

1. はじめに
岡山県の備南地区では千両ナスをブランド化し,9月から翌6月までハウス内で栽培している。果実の見た目の良さと,小さいうちに収穫するので果皮の柔らかさで高く評価されている。一方で果皮から水分が抜けやすいので,収穫後には適切な管理が求められる。水分を失うなどの品質劣化に伴う外観の変化は,画像計測することで非破壊での状態推測が期待できるが,深い紫色を呈するナス果皮の観察は可視光域では難しい。そこで,近年注目されている蛍光画像情報を適用できないかと考え,収穫後の果実の経時変化を記録した。

2. 装置及び方法
JA備南の選果場にて,最上級の「カク」と選果された千両ナスのLとMサイズを対象とした。今回品質劣化の指標とした水分損失は保存環境の温度に依存するので,10,20,30 ℃の3区に分け,収穫日から4日後まで(Day 0〜4とする)毎日カラー,蛍光画像を撮影し,質量を計測した。撮影時の光源は,カラー画像は白色LED,蛍光画像は365 nmの紫外線LEDを用いた。ここで蛍光とは,入力した波長とは異なる長い波長の光を物質が発する現象のことで,特定の物質の追跡や異物の検出などに応用されている。ナス果実が発する蛍光の詳細は明らかではないので,予備実験として蛍光分光光度計で様々な波長を入力して出力を計測したところ,汎用の紫外線LEDの365 nmの波長を用いると青から緑色で発色することが確かめられた。そこで色情報のBとGの明度(B,G値とする)を指標とすることとし,撮影は暗室内でデジタルカメラ(Canon EOS R10)で行った。

3. 結果及び考察
蛍光画像の経時変化の例として20 ℃貯蔵時をFig. 1に示す。Day 0には無かった青白い色が果実表面の胴体部分にDay 1に現れ始め,日数経過と共に面積や明度を増した。蛍光領域は胴体全体におよんだが,場所によって強度の違いがあり,良く蛍光する場所とそうで無い場所があった。カラー画像には大きな色の変化は見られなかったが,Day 2以降は水分損失に伴って表面に凹凸が生じた。
各温度区での質量変化を計測開始時を100 %としFig. 2に示す。温度に応じた変化割合で直線的に減少し,Day 4の10 ℃区が90 %であったのに対して,20 ℃区が82 %,30 ℃区が67 %と,高温ほどよく減少した。
色情報として,画像中から果実胴体部分のB,G値の平均値を計測したところ,日数経過と共に直線的に増加した。これは,Fig. 1のように徐々に蛍光が強くなっている様子を示しており,高温ほどより強くなった。
これらのことから,蛍光の強度から質量減少率を予測できると考え相関関係を調べたところ,0.86と高い相関係数が得られた(Fig. 3)。この関係は温度区別でも相違なく,水分損失の速度が蛍光に与える影響は小さいと考えられた。このことから,貯蔵条件に関わりなく,蛍光強度から含水量を推測できると考えられた。
今後は,予測精度を上げるための個体差の検証や蛍光物質の特定などを行っていきたい。

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Fig.1 Fluorescence images from day 0 to 4 (20°C)

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Fig.2 Effect of storage temperature on fruit weight

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Fig.3 Correlation between G-values and weight loss