動画による労働負荷評価のための機械学習による作業姿勢分類

河内慎之介

1. はじめに
農作業などの労働負荷評価は,重量物の取り扱いなど身体的負担の大きい作業を中心に評価が行われてきた。様々な姿勢の評価は,OWAS法など動画から数値化する方法も利用されているが,これは一定間隔で静止画を取りだし,評価者が目視で姿勢を分類する手間のかかる作業である。そこで,作業姿勢を評価者が分類して機械学習させたAIを用いて,自動的に分類し数値化する方法を検討した。

2. OWAS法
OWAS(Ovako's Working Posture Analysing System)法とは,フィンランドで開発された労働負荷の分析方法である。作業姿勢を4段階のアクションカテゴリ(AC)にて判定し,リスクを評価する。体幹,上肢,下肢の姿勢などからAC1:筋骨格系負担は問題なく改善不要な姿勢,AC2:筋骨格系に有害なために近いうちに改善すべき姿勢,AC3:筋骨格系に有害なために早期に改善すべき姿勢,AC4:直ちに改善すべき姿勢と分類され,これらの構成割合から作業の負荷が数値化される。

3. 装置及び方法
カメラはスマートフォン(Apple iPhone11)のものを用い,屋内の照明下で30 fpsの動画を撮影した。姿勢分類には,汎用の物体検出AIのYOLOv8を用いた。今回は体を大きく使う作業を想定して,重量物である箱が地面に2段積まれているところ,一旦しゃがんで1段目を体をひねって横に移動させた後,2段目を棚の上に持ち上げる一連の動作を対象とした。この際,図1のように分類は負荷の少ないAC1から,かがみ込む姿勢のAC2,しゃがんだ姿勢のAC3を経て,体をひねることで最大負荷のAC4となった。その後持ち上げ動作でAC2となり,元の姿勢に戻った。この動作を様々な角度から撮影した動画から,10フレームごとに画像を取り出して作業者の写っている領域を指定した。その時の姿勢を人間が判断して分類し教師データとした。教師データとして1,100枚の画像を学習させ,学習に用いていない検証用の動画で作業姿勢の分類を行い,評価者が目視で行った結果と比較した。

4. 結果及び考察
図2に評価者(人)とAIが行った分類結果を示す。正解率は80 %,誤検出は20 %であった一方,未検出はなく,画像中に作業者が写っていてれば,必ずいずれかの姿勢で分類できた。誤検出は全てAC3をAC4と判定したもので,しゃがんでいるのか,しゃがんでいて体をひねっているのかの区別は,判定者でも迷うところである。これに対して,足が伸びている状態でのAC1や2の分類は問題なく行われており,労働負荷評価のための作業姿勢分類に動画とAIは有力な手段であると考えられた。

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図1 重量物持ち上げ動作時のACの例

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図2 評価者とAIによる分類結果t