ブドウ‘オーロラブラック’の熟度判定に関わる色情報と糖酸度の関係

Color Information, Sugar Content and Acidity in Determining Ripeness of Grape ‘Aurora Black’

藤川真子

1. はじめに
オーロラブラックは,岡山県オリジナルの新品種で,大粒で糖度が高く,深い紫色の美しい外観に特徴があり,果粒が落ちにくいので,収穫後の日持ちが良いなど流通面でも優れ,次世代のブドウとして推奨されている。しかし,その栽培方法や品質評価方法など,まだ十分な知見が得られていない。栽培の最適化には,生体情報が必要で,熟度などの長期的な樹上での測定には,非破壊で外観から内部品質を知る必要がある。そこで,熟度に応じて変化する糖度や酸度を色情報から推測できないかを検討した。

2. 実験装置と方法
岡山大学農場のハウス内で栽培されている,樹齢10年のダブルH型仕立て(6枝)の果樹を対象とした(Fig. 1)。各枝均等に3箇所ずつ,計18箇所でサンプリングを行った。期間は8月21日から10月31日で,過熟に至る熟度変化も捉えるために,通常の収穫時期を過ぎても計測を続けた。サンプリングは,同じ果房の最上位に位置した果粒を収穫し,最終的な収穫時には全ての果粒を計測した。色情報としてL*a*b*表色系を色彩色差計(MINOLTA,CR-300)で,品質情報として糖度と酸度をブドウ用糖酸度計(ATAGO,PAL-BX/ACID2)で計測した。

3. 実験結果と考察
Fig. 2に糖度の経時変化を示す。最終的な収穫時も,最上位に位置した果粒だけをプロットした。日数の経過に伴い成熟が進み,糖度が上昇した。東の枝の糖度が高く推移したことから,成熟も早かったと推測される。このハウスの東側は空間が開けており,西や中央に比べて,日照条件が良かったことによると考えられた。果実の色は黄緑色から,赤紫色に変化し,最終的には黒紫色になった。東の枝の色情報に着目するとL*は35から28まで減少し,色が暗くなった。L*の変化は,9月半ばまでで,それ以降は一定の値で推移した。a*は5.2から9.2まで上昇した後7付近まで減少した。これは一度緑色から赤色へ変化し,その後黒色に近づいたことを示す。b*は5.9から-0.26へと変化し,黄色から青色が強くなった。b*はL*と異なり,適熟期を過ぎても変化は続いた。Fig. 3にL*と糖度の関係を示す。L*が小さくなるにつれて,糖度が上昇していくことを示しているが,30以下では色があまり変わらずに糖度だけ上昇したので,垂直方向の分布が広くなった。この領域は時期的にも過熟の果実を含むことから,適熟期までは色情報から糖度を精度よく推定できると考えられた。そこで,全データでL*の単回帰分析を行ったところ決定係数は0.53であったが,過熟を除いたデータでは決定係数は0.69に上昇した。a*やb*についても同様に単回帰分析を行ったところ,b*を用いた場合が最も精度良く決定係数0.67で予測できた。また,複数の色情報での予測モデルを検討するため,L*,a*,b*を説明変数として組み合わせて重回帰分析を行った。その結果L*,a*,b*全てを用いた場合が最も精度よく,決定係数0.76で色情報から糖度を予測できた。一方酸度は,期間を通じて上昇傾向にあったものの,色情報との関係は明確ではなかった。


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Fig.1 Triple bi-lateral cordon training and sampled points

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Fig.2 Changing and locational difference of sugar content

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Fig.3 L* and sugar content