促成栽培イチゴハウスでの画像による花の数計測
Counting Strawberry Flower in Green House using Movie
徳留英明,淺川瑞月
1. はじめに
イチゴの促成栽培は,収穫が半年間におよぶため,長期間生育を安定させることが重要である。しかし,広いほ場で全ての株を管理することは難しい。そこで本研究では,省力的で効果的な栽培を目的とした植物情報収集のために,動画から目視と物体検出AIによる花の数の計測を試みた。また,計測した結果を用いて成熟日数の推定を行った。
2. 実験装置および方法
ビニールハウス内で高設栽培されたイチゴ,品種「とちおとめ」に対して,ドローンを水平に飛行させて,小型カメラで通路側から昼間の自然光下で,花の多く位置する株上部を中心に動画で1週間に2回撮影した。画像識別には動画での利用に適しているYOLOv3を使い,動画から花の写っている画像400枚をランダムに取り出し,それぞれの画像中の花の位置を矩形で指定して,学習用データとした。このAIを用いて,12月から3月まで8日分の動画から42株を対象に,第二腋花房の花を検出した。また,同じ動画から花を目視で数えて正解値とし,計測成功率を求めた。一方,果実は適熟となったものから収穫を行い,株ごとに収穫数を計測した。今回は収穫日に注目し,花の咲いていた日と比較を行い,成熟日数の推測を試みた。
3. 実験結果及び考察
Table 1にAIと目視による花の数計測結果を示す。花の数は12月後半から増え始め,1月中旬頃最大になり,その後徐々に数が減り,2月後半で無くなった。株周辺の植物体以外の映り込みが少なかったので,誤検出は少なかったが,いずれの日も2割ほどは検出できない花があった。イチゴの花は,白色の花弁で構成されているので,緑色の葉や柄からの分離は容易であった半面,ハウスの壁面の明るい白色が背景となったときの検出は難しかった。また,花が横を向いていたり,花同士が重なった場合も検出に失敗することがあった。目視で検出した合計は352個に対して,AIで検出した合計は295個で,検出率は84 %であった。
一方Fig. 1の棒グラフで示す果実は1月中旬から収穫が始まり,2月後半頃収穫数が最大となり,その後徐々に数が減り4月初めまで収穫が続いた。収穫は週に2回であったので,全ての果実で同じ熟度で収穫することはできず,このことが日変動の大きな要因であると考えられた。ここで,果実数がある日を中心に正規分布すると仮定して,最小二乗法で係数を決定したところ,決定係数0.71でFig. 1の点線で示すように近似が行えた。
成熟日数の推定を行うために,花の数も同様に正規分布で近似を行って,それぞれの最大値となる日付を確認したところ,目視による花の数が1月10日だったのに対して,果実数は52日後の3月3日であった。この時期の成熟日数として過去の報告と一致したので,その推移を標準偏差σ,2σ付近の日付で比較したところ,48,43日と漸減することが確認された。果実の収穫までに要する日数は,積算日射量や温度と関係があるとされており,このことを表現できたと考えられた。
Table 1 Flowers number counted by AI and visually
Fig. 1 Weekly changing of flowers and harvested fruits number and approximation of them