香川県三豊市高瀬町における茶産業の現状と課題
Current Trends and Issues of Tea Farmers in Takase, Mitoyo city, Kagawa
齋藤亘
1. はじめに
香川県三豊市は県内の茶の8割を生産する産地で,町名を冠して高瀬茶として県民に親しまれている.品評会で最高賞を獲得するなど高品質ではあるが,生産量は少なく全国出荷量の0.2 %に留まる.近年消費者のライフスタイルの変化にともなって,緑茶の消費量・購入量が減少するとともに茶葉の価格も低迷し,茶園の面積・生産量も全国的に減少している.高瀬茶に関しては公の統計情報が公開されていないので,高瀬茶業組合関係者を対象に,茶産業の現状把握を目的に聞き取り調査を行った.
2. 調査対象
高瀬茶業組合の総務部長と,登録されている生産者22名(平均年齢70歳代後半)のうち10名(60歳代3名,70歳代3名,80歳代4名)を対象として聞き取り調査を行った.
3. 調査結果および考察
総務部長からの統計資料によると,最盛期には約250戸であった農家数は1973年をピークに漸減し,現在は22戸となった(図1).2000年頃までは他の収益の大きいオリーブやクリなどへの転作が多かったが,近年では後継者がおらず耕作放棄される畑が目立ってきている,とのことであった.
生産者への主な質問事項は収入,大変だと感じる作業,後継者の有無,特に深刻に感じている課題で,茶による収入については図2の通りであった.茶業のみで生活している生産者はおらず,10名中7名は茶による収入は全収入の3割程度であり,基本的に年金で生活していた.大変だと感じる作業は図3に示す.それぞれの理由として,施肥は重い肥料を持ち運ぶのが辛いから,摘採は天候や時期を見極めて短期にやらないといけないから,雑草の管理は刈っても枯らしても次々に生えてくるから,とのことであった.後継者のいる生産者は2名のみにあった.また,検討中という方が2名おり,その2名は,息子が現在は他の仕事をしているが,退職後に茶業を引き継ぐことを検討しているという状況の人であった.後継者不足に加えて耕作放棄地からの虫害や獣害も深刻で,地域の茶産業は存続の危機に瀕していた.
これ以上の耕作放棄地の増加を防ぐには,まだ余力のある近隣の生産者への委託が考えられる.茶は一番茶と呼ばれるその年の新芽に価値があるが,基本的に一日で刈り取らなければならない.乗用摘採機の能力から試算すると1.8 ha程度が限界であり,摘採日の異なる品種を導入しても今度は管理作業が制約となり,2.5 ha程度が上限となる.現在の22名の栽培面積である約19 haをカバーするには8戸の生産者が必要となるが,収入は400万円近く見込める.現場からは誰でも良いから継いで欲しい,高瀬茶を後世に残してほしいとの声が大多数であることに加え,1970年ごろに構造改善事業を行っていることから区画整備がされており,作業がしやすく条件の良い土地が残されている.これらのことから新規就農者さえ存在すれば農地集約による存続は現実的であると考えられた.
Fig. 1 Change in number of farmers
Fig. 2 Income from tea
Fig. 3 Works which farmers feel very hard
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