シイタケ菌床栽培の最適化
─ 子実体発生における照射光の影響 ─

Optimization of Sawdust-Based Shiitake (Lentinula edodes) Cultivation Environment
― Effect of Lighting Color on Fruit Body Development ―

竹内理人

1. はじめに
 現在,国産の生シイタケの生産は,原木栽培から菌床栽培へと移り変わっている.菌床栽培は,培地に菌糸を蔓延させる培養期間と,子実体(キノコ)を発生させる発生期間の2つからなる.シイタケ生産には光が必要であることから,本研究室では光に注目して検討を行ってきた.その結果,培養期間での光照射タイミングや発生期間の光照射時間が,子実体の大きさや形,発生個数などに影響を与えることが明らかになった.また,生産現場では青色光が良く用いられ,多くのキノコ類に成長促進などの効果があると言われているが,あまり定量的な報告はない.シイタケにおいても光色についての文献は散見されるものの,不明瞭な点が多い.そこで,本研究では照射光の色の違いに注目して,発生期間中の子実体に与える影響を検討した.

2. 実験装置および方法
 栽培は,全て環境制御室内で行った.培養条件は,本研究室で行われた先行研究を参考にして,温度は18-22 °C,光環境は培養開始から15日目までを暗黒,それ以降を最大照度200 lxで90日間連続照射とした.発生条件は,培養終了後の菌床を袋から取り出して表面を水洗いした後,温度を18-21 °Cとし,光環境は電球型LED(朝日電器株式会社製)の白,赤,青色(以下W,R,B区)の3種類を光源として,それぞれ最大照度100 lxで連続照射とした.供試菌床は,1区当たり12個とした.収穫は,一般的な方法に従い,子実体の傘の裏側の膜が切れたタイミングで行い,発生個数,傘と柄の質量,傘の直径と厚さ,柄の長さを測定した.

3. 実験結果および考察
 Fig. 1に子実体一つ当たりの質量を示す.W区に比べてB区だけでなくR区もやや多くなり,発生個数が1割程度少なくなったが,有意差はなかった.個体の質量が増すに伴い,菌床ごとの発生個数が減少することはこれまでの研究結果と一致し,それらを積算した菌床当たりの収量にも差はなかった.傘の直径では,Sサイズが多く,市場的価値が高いとされるMサイズ(直径40-60 cm)のものは,全体の半数程度にとどまった.今回,培養と発生を同時期に行ったため,発生期間を優先した低い温度設定が,培養最終期間での発生刺激となってしまったことが,原因の一つであると考えられた.実験区間の差はなかった.
 傘の厚さにも有意差はなかったが,B区がやや厚く,R区がやや薄い傾向となった(Fig. 2).このことは,W区より同様に質量が多かった両区であるが,形は異なっていたことを示している.傘が薄くなったR区は後述するように柄が長くなり,B区は肉厚な傘となった.成長促進の観点からは,発生操作後の収穫日や期間も重要になってくるが,収穫のピークがR区,B区はW区より1日早い結果となったものの,大きな違いはなかった.これらより,今回の条件では青色光に明確な差異を見出すことはできなかった.
 一方,有意に差があったのは,R区の柄の長さで,他の区に比べて長いという結果となった(Fig. 3).この反応は,先行研究の暗黒下で発生させた場合と似ていた.シイタケの光受容体は明らかになっていないが,ある程度以上の長い波長には応答しない可能性が示唆された.今後は,より厳密に波長を設定して,子実体発生との関係を調べていきたい.

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Fig. 1 Weight of each mushroom
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Fig. 2 Pileus thickness
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Fig. 3 Stipe length

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