貫入抵抗値による生シイタケ評価方法の検討

藤友裕也

1. はじめに
 現在,市場に流通する生シイタケの評価は,傘の直径や色と形などの外観が用いられ,それらは目視で行われている.一方,食味の評価では,味やにおいと同様に,硬さなどの食感が重要視される.そこで,シイタケの客観的な評価方法として,硬さという物理特性が利用できないか検討することにした.一般的な食味試験を参考に,今回硬さは貫入抵抗値を用いて表現し,シイタケの部位や種類による差を測定した.

2. 実験装置及び方法
 卓上型材料試験機を用い,円柱状プランジャを貫入させたときの応力を貫入抵抗値とした.プランジャの直径と貫入速度は,予備実験で抵抗値の変化が明確であった,1.2 mmと40 mm/minとした.供試材量は,市販されている菌床栽培4種類(以下菌床A,B,C,D)と,原木栽培1種類(以下原木)の生シイタケとした.傘と柄は刃物を用いて切断し,測定部位は,傘の上部,側面部と底部,柄の側面(上部,下部)とした.底部はひだ部分と柄のついていた部分をそれぞれ測定し,傘の内部組織(以下肉)は切断した断面で測定した.

3. 実験結果および考察
 図1に傘上部の貫入抵抗値を示す.この値は大きいほど硬いことを表すが,0.4 N/mm2程度と部位別では最も小さな値となり,種類による差はなかった.シイタケの傘上部には褐色や黒みがかった薄い層があり,この層をプランジャが突き破るのに要する応力は,種類によらず同程度であったと言える.側面部も同様の分布となり,差はなかった.今回測定したシイタケの傘は開ききっていない状態であったので,側面部も上面と同様に層の部分を貫入したと考えられる.
 底部ひだ部分は傘の中では最も貫入抵抗値が大きく,上部の2倍程度となった(図2).実際に硬かったのはひだそのものでは無く,底部組織で,断面からもこの層が観察できた.種類別では原木が菌床の1.5倍程度値が大きく,菌床間に差はなかった.この傾向は底部柄部分や柄も同様であった.
 一方肉部分は,菌床Bが最も小さな値となり,次いでAとDが同様の値で,Cと原木が大きな値となった(図3).食感においては,この肉部分の影響が大きいと考えられる.したがって,評価にはこの値を用いるのが良いと考えられる.貫入抵抗測定器は携帯型もあり,実際の現場でも簡単に測定可能であるが,傘上部や底部にある層の値は肉とは傾向が異なるため,評価指標として用いるには,傘の断面を露出させる手間が必要である.しかし,硬さという客観的な数値は,評価指標として有望であると考えられるので,今後は硬さと,食味との関係を明らかにしていきたい.

fujitomo.jpg
図1 傘上部の貫入抵抗値
fujitomo2.jpg
図2 底部ひだ部分の貫入抵抗値
fujitomo3.jpg
図3 肉部分の貫入抵抗値

秘蔵ムービー