未利用再生可能エネルギの有効利用に関する研究
− 剪定木堆肥化時に発生する二酸化炭素について −
Study on Effective Utilization of the Unused Renewable Energy
― Carbon Dioxide Generated by Pruned Branch Composting ―
井上和也
1. はじめに
岡山県南部地方特有の未利用再生可能エネルギとして,果樹の剪定木がある.利用方法の一つとして堆肥化があり,この時微生物の活動によって熱とCO
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が発生する.この熱とCO
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は長期間持続するという特徴を持っている.これらは施設栽培との組み合わせが期待され,これまでも熱利用について検討されてきた.施設栽培では不足するCO
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を補うために炭酸ガスなどで外部からCO
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を供給することもあり,今回は堆肥化装置と施設を通風によって連結させることを想定し,堆肥化装置からCO
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を取り出す方法について検討することとした.施設の空気を堆肥化装置に吸入することで,得られるCO
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の量も変わると考えられるため,吸入する空気の温度とCO
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の関係を明らかにした.
2. 実験装置および方法
堆肥原料は,学内の剪定木を乾燥させ2 cm程度に破砕したチップを用い,副資材として米ぬか,油粕をCN比30になるように混合し,断熱容器(29 L)に入れて含水率60 %になるまで給水した.CO
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を取り出すための通風は圧送ポンプを用い10 L/minで行った.今回は施設内で栽培は行わず,堆肥化装置をハウス内に設置し,温度変化がCO
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排出量に与える影響に着目することにした.そこで,ハウス内の気温,堆肥中心付近の温度(内部温度)と装置吸排気口のCO
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濃度を測定した.実験期間は2015年11月から2016年2月であった.
3. 実験結果および考察
堆肥化過程には糖分解期,セルロース分解期,リグニン分解期が存在し,このうちリグニン分解期が最も長期間持続する.実験結果として,リグニン分解期に入っていると考えられる時期の気温と内部温度,装置排気口のCO
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濃度の時間変化の一例をFig. 1に示す.この時期の内部温度は,最高でも16 °C程度で,最低は10 °Cを下回ることもあった.ハウス内の気温は3 °Cから23 °Cで推移し,これに追随するように内部温度とCO
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濃度が変化した.これは,まず吸入された空気の温度によって内部温度が上げられ,それによって微生物が活性化してより多くの呼吸をしたと考えられる.したがって,内部温度を人為的に上げることでより多くのCO
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を得ることができると考えられた.取り出せるCO
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を算出すると熱量1 kJで堆肥1 L当たり7.9 × 10
-6
gであった.CO
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濃度は9時ごろに最も低く,16時ごろに最も高くなった.施設栽培でCO
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施肥が必要なのは日中であり,この濃度変化は施設栽培との組み合わせに都合がよいことも分かった.気温変化にCO
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濃度変化はよく追随したことから線形近似を試みた結果,今回の装置では気温と4時間後のCO
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濃度の関係が最も相関が高かった(Fig. 2).この結果から,通風を調節することでCO
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濃度を制御するためにはその瞬間の排気口の濃度値ではなく,4時間前の気温を測定する必要があることが明らかになった.より多くのCO
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を取り出す方法として,内部温度を低下させている夜間の通風停止も試みた.通風を行わない時間は,CO
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施肥が必要なくなる日没から気温が内部温度を上回るまで(10時頃)とした.今回の装置の断熱性能は高くなかったので夜間の内部温度は通風を続けた結果と同様であったが,通風開始直後のCO
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濃度は高くなった.これは夜間に堆肥化装置に蓄積された分のCO
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で,通風開始後の20分間で通風時間全体の4.7 %の量を得た.今後さらに通風量や通風方法について検討していきたい.
Fig. 1 Variation in CO
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concentration and temperatures
of outside and internal compost
Fig. 2 Relation between outside temperature and CO
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concentration
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