2. 実験装置および方法 供試材料として,岡山大学付属山陽圏フィールド科学センターで,赤肉研究のために栽培された白桃(品種:清水白桃)を26個使用した.光源にはハロゲンランプ(100 W),撮影には近赤外画像の取得が可能なデジタルビデオカメラ(SONY社製,DCR-TRV30)と,760 nm以下の波長の光をカットする光学フィルタ(富士フィルム社製,IR76フィルタ)を用いた. 透過光のみを撮影するために,アルミ板に空けた直径約6 cmの穴の周囲をスポンジで囲んで,その上に果実を置き,装置全体を暗室条件にした.今回の果実では全体を透過させての撮影ができなかったため,果頂部を下にした状態で側面から撮影を行った. 赤肉症は収穫後時間経過とともに進行することから,撮影は毎日行い,収穫6日後に果実を切断し,赤肉の有無,その程度の調査と切断面の撮影を行った. 3. 実験結果および考察 赤肉症は18個に認められた.以降,赤肉症の果実を赤肉果,そうでないものを正常果とする. 収穫直後の透過画像をFig. 1に示す.正常果,赤肉果ともに果皮付近からの透過しか得られず,この段階での判別は難しかった.一方,6日間経過したFig. 2では,正常果の透過領域が増加したのに対して,赤肉果ではあまり増えることはなかった.そこで,透過した領域を果実全体との面積比で表したところ,正常果の10 %に対して赤肉果では6 %であり,それぞれを十分判別可能であることが分かった. この側面への光の通り方に差があった原因を探るために,果頂部から1 cmと2 cmで切断して,それぞれの透過画像を上面から撮影した.1 cmの厚さであれば撮影に十分な透過を得ることができた.まず,上面,下面とも果肉の状態である1〜2 cm部分の画像をFig. 3に示す.正常果は,中央部から周囲まで輝度変化が緩やかな画像となった.また果肉の繊維も識別可能であった.一方,赤肉果は中央付近に輝度が高い領域があり,周囲に向かって輝度が落ちていった.また中央部付近では光の通り方が一様となり,繊維の識別もできなくなった.この部分は,赤肉症で果肉の組織がもろくなるという現象を表していると考えられた. つぎに,撮影面が皮の状態である果頂部から1 cm断面の画像をFig. 4に示す.この場合は逆に正常果の中央部の輝度が高くなったが,周囲に向かっての輝度変化は緩やかであった.一方の赤肉果では,全体に輝度は低く,むらが多かった.特に左右の果頂部の膨らみに輝度が高い部分があるが,ここはFig. 3の中央付近の輝度が高い領域とほぼ一致した. このことは,組織がしっかりしている正常果では光の拡散が良く起きて,果皮を一様に透過したのに対して,局所的に組織のもろくなった赤肉果では,その部分の光は拡散せず,その結果輝度にむらがでたことを示していると考えられた.また,この周囲への拡散が少ないことが,Fig. 2における透過領域の差異になったと考えられた.今後,収穫直後の情報でも判別を可能とすべく解析を進めたい. |
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