2. 実験装置および方法 知的障がい者の多くは,臨機応変な対応を苦手としている.今回取り扱った小型耕うん機は,軽量で,ハンドルのアクセルレバーを握ると前進する比較的操作が容易な機械である.耕うん作業は,耕うん爪の後方に取り付けられた抵抗棒の深さで耕深を調節しながら行う. しかし,土壌の状態によってハンドルが大きく上下したり,予測しない動きをしたり,また機体の振動が激しく安定しないことは,障がい者にとって使いづらい面である. 障がい者施設での調査で,障がい者に実際に耕うん機を操作してもらった結果,1)土壌の状態に応じて,ハンドルを上下させて一定の耕深を保つことが難しく,下げすぎて前進できなくなるほど深く耕してしまったり,上げすぎて急に前進してしまう,2)旋回が困難である,などの問題点が抽出された. これらの問題を解決する方法として,抵抗棒の後方に車輪を追加した.ハンドルを下げても抵抗棒が土壌に深く入らないことに加えて,直進時,旋回時の操作性と安定性も向上すると考えられた.Fig. 1に改造した耕うん機を示す.耕うん爪回転軸からの距離が30,40,45 cm(それぞれWheel 30,40,45とする)の3種類の車輪を試作した. 3. 実験結果および考察 直進時の安定性評価は,本学の圃場において未経験者6人(男性5人・女性1人)を対象とし,車輪あり・なしの計4種類について10 mの耕うん作業をビデオ撮影し,その動画をもとに約0.2 mごとの耕深の変動を算出して行った.平均値を耕深0としたときの上下変動の一例をFig. 2に示す. 車輪の追加により変動の間隔と量が軽減していることが分かる.耕深変動量の累積値をTable 1に示す.車輪ありでは,車輪なしに比べ累積変動量が全体的に小さいことから,耕深の変動が軽減されたといえる.また,車輪45は車輪なしに比べて有意に小さかった.さらに,車輪を追加したことで,ハンドルを下げすぎても,前進が難しくなることはなくなった. 旋回時の操作性評価は,未経験者20人(男性9人・女性11人)を対象とし,車輪あり・なし,車速2段階で,旋回時に抵抗棒が描いた弧の直径を計測した(Table 2). 一般的に車軸間距離(今回は耕うん爪回転軸から車輪中心までの距離)が大きいほど大回りとなって旋回性が劣るが,車輪の有無や種類,速度の違いによる有意な差はなく,車輪の追加による旋回性への影響はないと考えられた. 以上の結果より,車輪を追加することで,耕うん作業における旋回性は維持したままで,直進時の操作性と安定性が向上することが明らかとなった.今後は,障がい者を対象とした現地試験を行い,さらなる機械のブラッシュアップを行う必要がある. なお,本研究は農林水産省・食品産業科学技術研究推進事業25071C「高齢・障がい者など多様な主体の農業参入支援技術の開発」(平成25?27年度)により実施した. |
|