2. 実験装置および方法 本研究では,栽培施設と堆肥を封入した装置とを連結する循環システムを構想した.堆肥から施設へ発酵熱とCO2を通風によって送り,逆に施設から堆肥の反応持続に必要とされる水分を,日中の施設内の湿潤な空気によって賄うもので,通風はこれらの輸送手段であると同時に,堆肥にO2を供給することで,労力を要する切り返し作業を省略することも考えた. 堆肥原料として,学内の剪定木を1〜2 cmに破砕したチップ,窒素供給の副資材として米ぬかと油粕をCN比30になるようにポット(1.2 L)に混合し,最大含水率(約60 %)になるまで給水を行った. 今回は取り出すことのできる熱量を計測することとし,内部の空気を移動させるためにポットを断熱容器内の隔壁に固定し,51 Wの通風ポンプを使用して上面から下面へと通風を行った(Fig. 1).通風させる空気は,一度水中を通すことで加湿した.通風量はそれぞれA区:無風,B区:10 L/min,C区:30 L/minとし,堆肥中心付近(内部温度)と容器の出口,外気温を計測し,得られた熱量を検証した.また,各ポットの質量と,各出口のCO2濃度も計測した.実験期間は2014年12月から2015年1月であった. 3. 実験結果および考察 内部温度は,実験開始から数日で約20 ℃に達し,1週間後から次第に低下し,2週間後からは10 ℃前後を推移する状態が1か月以上継続した.10 ℃前後になってからは,外気温の変化に伴って内部温度も変化し,日中は外気温の方が高い日もあったが,夜間(18:00〜翌6:00)は常に外気温以上であった(Fig. 2).熱として取り出すことができた出口温度は内部温度より数℃低かったが,外気温と比較すると1〜2 ℃高く,この状態が実験期間中継続した.B,C区において得られた熱量を算出したところ1日換算でB:43 kJ/kg,C:144 kJ/kgとなった. 一般的なボイラ等による木質チップの燃焼によって得られる熱量が約13,000 kJ/kgとされているが,今回のC区では約3か月の期間で同量の熱量を得ることができるという結果になった.このことから,低温ではあるが長期間にわたり利用可能であり,ロスを伴う燃焼による瞬間的な温度上昇とは異なる熱源として,堆肥発酵熱は利用可能であると考えられた. 各ポットの質量は通風を行っても減少することがなかったことから,加湿による給水は十分であったと思われた.一方,CO2濃度はいずれの区も400 ppm前後を推移し,外気とほとんど差がなかった. しかし,今回人為的に内部温度を上げるとCO2濃度も上昇したことから,日中施設で発生する余剰熱を利用すれば,昼間の光合成に必要とされるCO2供給を補助することができると考えられた.今後は実際の栽培施設と組み合わせて検証を行っていきたい. |
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