2. 実験装置および方法 栽培は全て環境制御室内で行った.シイタケの種菌を接種した培地を栽培袋に入れ,温度19〜22 ℃,CO2濃度3,000 ppm以下,最大照度2,600 lxで90日間培養を行った.照度は非常に低い範囲においては影響があるが,今回は十分な照度があったためその影響はないものとした. 培養は暗室で行い,各実験区を遮断した.実験区は照射タイミングによって分け,現場と同じ1次培養の最初からを0日区,2次培養の最初からを30日区,2次培養の途中からを60日区とした.それぞれ2次培養の終了まで照射を行った.2次培養の終了後,菌床を袋から取り出し,温度18〜20 ℃,最大照度1,200 lxで発生を行わせた. 発生した子実体をカサの裏側の膜が切れた後に収穫し,個数,生体重,直径を測定した. 3. 実験結果および考察 1次培養において各実験区間の成長の差はほとんど見られなかった.しかし,2次培養においては60日区で褐変が遅れ,子実体の発生もほとんどなかった.このことから,2次培養には光が必要で,褐変には60日程度を要することが分かった.以降の比較は0日区と30日区とした. 菌床当たりの子実体の発生個数の分布をFig. 1,生体重の分布をFig. 2に示す.菌床当たりの発生個数の平均は0日区で40.3個,30日区で8.0個,生体重の平均は0日区で8.0 g,30日区で28.5 gだった.0日区の発生個数は30日区の3倍以上だったが,生体重が30日区の1/3以下となったため,総収量としてはほぼ同じとなった. しかし,生産現場では発生個数が40個以上の場合,子実体同士の干渉を防ぐために芽かきを行う.今回の多くの0日区では芽かきが必要となり,現場では総収量が減少する可能性があるとともに,作業が増加することから,培養の最初から照射を行う現状の栽培方法には問題がある可能性が示唆された. つぎに,Fig. 3に子実体の直径の分布を示す.平均は0日区で34.2 mm,30日区で57.5 mmだった.現在一般的に流通している子実体の直径は40〜60 mmであり,その割合は0日区で20.7 %,30日区で34.7 %だった.一方,0日区では直径40 mm以下の子実体が79.3 %,30日区では直径60 mm以上の子実体が47.2 %となった.このことから照射タイミングとして0日区は早すぎる,30日区は遅すぎると考えられた. しかし,30日区の大きい子実体は付加価値をつけて販売できる可能性がある.このことから,1次培養の光照射のタイミングをコントロールすることによって,生産者が意図する子実体を作れる可能性が示唆された.今後は,照度を含めた他の環境の影響についても明らかにしていきたい. |
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