2. 実験装置および方法 湿度40 %に設定した環境制御室内において,32 W Hf蛍光灯を設置した装置内に,定植後約3週間のキク12株を明期16時間,暗期8時間で21日間栽培した.灌水は一日に一回行った.供試した品種は精興の望で,実験期間中は温度,光量条件を一定にするために,新たに発生した葉やわき芽は全て取り払った. 撮影は,赤色LEDの透過光を用いてデジタルカメラで毎日行い,画像処理プログラムを用いて黄斑面積比(黄斑面積/葉面積)を算出し,これを黄斑の評価指標として用いた.また温度,光量は葉毎に期間中データロガで収集した. 3. 実験結果および考察 今回,観測した30枚の葉の成育環境は,温度19.5〜22.5 ?C,光量100〜500 μmol/m2/sであった.積算光量が増えると,黄斑面積比も増加した.しかし,同じ光量でも大きくばらついた.面積比の高い葉は温度も高かったことから,温度の影響を検討した. Fig. 1の(a),(b),(c)は温度がそれぞれ19.5〜20.5 ?C,20.5〜21.5 ?C,21.5〜22.5 ?Cのときの,積算光量0〜300 mol/m2における面積比である.いずれも積算光量とともに黄斑面積比が漸増したが,増加の仕方は温度によって異なった. 黄斑は,黄斑面積比1 %を超えると目視が可能になるが,(a)ではほとんどの葉が超えず,黄斑を確認することができなかった.しかし,(b)では半数以上の葉が,(c)では全ての葉が超え,共に商品価値の低下をもたらすほどの黄斑が発生した.今回の範囲では,温度が高いほど黄斑面積比が増加した. そこで,1 %を超えるために必要な光量の目安を求めるために,指数関数で近似を試みた.(a)では積算光量350 mol/m2,(b)では250 mol/m2,(c)では200 mol/m2であった. 今回の範囲において,異なる光量でも積算光量による黄斑面積比の変化の傾向がほぼ同じであったことや,温度が高くなるにつれ低い積算光量で黄斑が確認できたことから,低光量であっても積算光量によって黄斑は目視可能となり,また温度上昇に伴い発生のリスクが高まると考えられた.したがって,積算光量に加えて温度に考慮した栽培を行う必要がある.たとえば,光量を測定することで目安となる積算光量に達する日時を予測し,黄斑の発生日を事前に知ることで,遮光するなど対策を行うことが可能となる. 今後,温度の幅を広げることで,さらに黄斑と積算光量の関係を明らかにし,また日中の温度変化が黄斑の発生にどのように影響しているのかを明らかにしていきたい. |
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