未利用再生可能エネルギの有効利用に関する研究
─ 岡山南部中間地域の調査とマッピング ─
綾野 宏紀
1. はじめに
近年,再生可能エネルギの有効利用が注目されている.
大きな特徴として,枯渇しないという性質がある一方で,エネルギとしては密度が低く,加えて季節変動や天候,太陽エネルギでは地形などの影響を受けることから,供給源としては,不安定である.そのため,多くの地点から輸送し,収集して利用されている.さらに,エネルギは輸送,変換により減少するという性質があるため,これらを繰り返すと大きなロスとなる.そこで,未利用のエネルギを取り出し,その場で利用する,即ちエネルギの地産地消の検討を行った.
中間地域は傾斜地などの地形から,平地よりも未利用の再生可能エネルギが多く存在すると考えられる.一方,中間地域は,地形の制約から平地に比べ一つの圃場の面積が小さく,点在している.そこで,中間地域において,点在している需要地と供給地をマッピングし,情報付き地図を作成して,それらのマッチングを行い,エネルギを必要な場所に必要な分だけ配分可能なシステムの構築を最終目的とする.今回は供給地の調査を行い,エネルギを取り出し易く,利用しやすい太陽エネルギと風力,水力を調査項目とした.
2. 実験装置および方法
今回の調査は岡山南部の中間地域および平地とし,調査項目は太陽エネルギ,風力と水力とした.太陽エネルギと風力は気象計を用いて2013年7月〜2014年1月まで計測した.気象計は,標高180m付近に位置する岡山大学津高牧場を中間地として,岡山大学津島キャンパスを平地としてそれぞれ設置した.水力に関しては非かんがい期の2013年10月〜12月に35か所を現地調査した.
水力から得られるエネルギは,重力加速度に流量と落差を乗じることで求めた.水力の調査では,エネルギの地産地消を考慮し,農業生産の行われている付近の農業用水を中心に計測した.今回計測を行った地点の水力P [kW]の算出は,下の式(1)を用いて計算を行った.
P=gQH+1/2 QV^2 (1)
g : 重力加速度 [m/s2] Q : 流量 [m3/s]
H : 有効落差 [m] V : 流速 [m/s]
3. 実験結果および考察
気象計の計測結果から,風力はエネルギを取り出すために10 m/s以上の風速が必要とされているが,今回の調査地点での風速は1.0 m/s未満でエネルギ源として期待できない値であった.一方,太陽光は地形によっては中間地でも平地と同様に利用可能であることが分かった.そこで,今回水力を調査した地点での太陽光の有効性についても検討を行った.Table 1 に平地(A地点)と中間地で山の北斜面(B地点),南斜面(C地点)における,日射量[kWh/m2]と水力[kWh]を示す.
日射量は,それぞれの地点の斜面の向きや周囲の山などの地形の影響を考慮して算出した.夏季では日中,太陽高度が高いので差は小さいが,冬季においては高度が低いので,B地点のような北斜面では地形の影響を大きく受けて,平地との差が顕著となった.太陽光の季節変動は地形による影響が大きく,冬季での利用には注意が必要であることが分かった.
水力は中間地では地形から落差を得ることが容易である一方,平地では流量が多い場合でもあまりエネルギを取り出せないことが分かった.今回の調査は非かんがい期におけるものなので,これらの用水路は年間を通じて水力が利用可能であると考えられた.日射量と水力をマッピングした例をFig.1に示す.D地点では,水力も大きく,日射量も十分あり,いずれのエネルギも有効であるといえる.
今回の供給地の調査,マッピングから,中間地において供給地は点在しており,利用可能な地点も多く存在することが分かった.今後は,エネルギの需要地と量も調査し地図に加えることで,有効利用の検討を行っていきたい.