2. 実験装置および方法 これまでの観察において,葉を光にかざすと初期黄斑が確認しやすかったことから,透過光を利用した計測方法を検討することにした。最初に白色光を透過させ,撮影した画像における明度の差により抽出を行ったところ,明度の重複部分があったため,黄斑とともに正常な部分も一部抽出してしまった(Fig.1)。そこでLEDを用いて複数の色の透過光を検討した結果,赤色と青色LEDの透過光は明度分布に重複部分がなくなり,しきい値によって黄斑と正常部分を分離できた。これは,クロロフィルの光吸収帯が450nmと680nm付近にあるため,それに近い波長をもつ赤色と青色LEDは正常部分でよく吸収され,クロロフィルが減少している黄斑部分を透過する光量との差が大きくなったからであると考えられた。今回は黄斑部分と正常な部分で,より明度の平均値の差が大きかった赤色LEDを光源に用い,透過光をデジタルカメラで撮影する装置を試作した。 また,透過光を用いると黄斑と同時に元々クロロフィルが少ない葉脈や,葉縁部分も同時に抽出してしまったため,これらはさらに画像処理を行って取り除いた。葉縁部分に関しては,葉のエッジから20ピクセル分を計測対象外とした。葉脈部分は形状的特徴の違いから,円形度と面積を使って黄斑と区別して取り除いた。これらの処理によって,黄斑のみを抽出することができた。 今回の計測対象である供試植物には,黄斑が発生しやすい品種の‘ウインブルドン’の,挿し木をしてから3週間程度のものを使用した。この供試植物を,過去の研究で黄斑発生が顕著であった温度35℃湿度50%に設定した環境制御室内に入れ,ハロゲンランプ(500W)を光源に使用して栽培した。そして,この環境条件を与えてから毎日,試作した撮影装置を用いて撮影した後,画像処理によって黄斑を抽出し,対象の葉に発生した黄斑の面積を計測した。 3. 実験結果および考察 実験結果をFig.2に示す。葉の大きさがそれぞれ異なることから,黄斑の面積は葉全体に対する割合で表した。検討した計測方法によって,与えた光量が比較的大きかった葉では,実験開始から2,3日で最初の初期黄斑の発生をとらえることができた。これに対して,与えた光量の小さかった葉では黄斑の発生が遅く,面積比も低い数値で推移する様子をとらえ,光条件の違いによる黄斑発生の差も見ることができた。今後,今回の計測方法を使って,環境制御による初期黄斑の進行抑制の可能性について検討したい。 |
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