2. 実験装置および方法 今回試作したセンサの概要を図1 に示す。この電気抵抗式のセンサは,ブロック中の水分量に応じて電極間の抵抗値が変化する。よって,抵抗値を計測することで,あらかじめ求めておいた関係式から土壌中の水分を計測できる。従来のセンサが持つ問題の原因として,石膏の水ポテンシャルが土壌に対して低すぎることが考えられた。作製したセンサを土壌に入れる前に空気中で乾燥速度や最大含水量,密度などを計測し,これらの関係を調べた結果,ブロックの密度が低いほど乾燥速度が速く,水ポテンシャルが高くなることがわかった。そこで,成型時の混水量を高くすることによって,ブロック内部に空隙を増やし密度を低くした。従来のセンサは成型時の混水量は70 %だったが,混水量100 %および成型限界の200 %のセンサを作製した。また,別の物質を混ぜることでさらに密度を低くできるかを検討した。複数の材料から乾燥速度や最大含水量を比較した結果,素材自体の最大含水量が高く,乾燥速度が早い発泡フェノール樹脂を採用した。成型しやすい強度を得るために5:1(石膏:発泡フェノール樹脂)で混合してセンサを作製した。これらのセンサを土壌に埋めた後に吸水させ,乾燥させながら一定温度(30 ℃)で抵抗値と土壌含水率を計測した。なお,分極を避けるために交流電源(90 Hz,正弦波)を使用した。 3. 結果および考察 計測結果を図2に示す。従来の混水量70 %のセンサは土壌含水率8 %以下の乾燥領域では応答性が良いが,計測範囲は狭かった。それに対して混水量を高くしたものは土壌含水率の高い領域でも応答性が良く,混水量200 %のセンサは土壌含水率20 %付近まで抵抗値が変化した。また,発泡フェノール樹脂を混合したセンサは土壌含水率30 %付近まで抵抗値が変化し,計測範囲をさらに広くすることができた。密度は,混水量70,100,200 %,発泡フェノール樹脂混合のセンサがそれぞれ1.25,1.08,0.70,0.61 g/cm3,であり,密度を低くしたセンサほど土壌含水率の計測範囲が広くなった。今回の短期間での実験でこれらのセンサは安定して使用できたが,今後は実際に圃場で長期間使用しても安定して使用できるかを検証していきたい。 |
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