サラダナ栽培における間欠照明方法の検討

サラダナ栽培における間欠照明方法の検討

吉田侑平

1. はじめに
 近年の植物生産方法の一つとして植物工場がある。特に環境条件を人工的に管理する完全制御型の植物工場では,異常気象にも左右されず周年栽培が可能である。また,密閉された空間なので,菌数が少なく,無農薬栽培が可能で,安全・安心な野菜を提供することができる。しかし,環境の制御にかかるコスト,特に照明コストが実用化へのハードルとなっている。これまでの研究結果から,点灯と消灯を繰り返して行う間欠照明を用いることにより,短期的にはエネルギの利用効率が上がることが分かっている。本研究では,間欠照明を長期的に用いた場合でも,植物に悪影響を与えることなく,照明コストを抑えることができるかを検証した。間欠照明用の装置を試作し,従来の連続光による対照区,間欠照明方法を用いる間欠照明区(以後間欠区)に分けた対照実験を行った。

2. 装置および方法
 まず,環境制御室内において,同じラックを2つ設置し,棚板の側面2方向に3波長Hfインバータ蛍光灯を取り付けて,照明時間をタイマで設定した。間欠区にはさらに1minおきに電源のON-OFFを切り替えるタイマを取り付けた。両ラックの間は暗幕により光を遮断した。両区ともに普通電力量計を取り付け,対照実験中の電力消費量を測定した。供試材料はトレイで養液栽培したサラダナを用いた。今回サラダナを対象とした理由は,すでに植物工場で多く利用されていること,葉が大きいため生育が早く,栽培が容易なことなどが挙げられる。播種後約2ヵ月が経過するまで同じ環境で育て,その後対照区,間欠区にそれぞれ平均質量が同じになるように9個体ずつに分けて対照実験を開始した。環境条件はPPFD80μmol/m?/s,温度20℃,湿度60%とした。対照区は現在完全制御型の植物工場で行われている明期12h・暗期12hの周期で栽培した。間欠区は明期20.5h・暗期3.5hの周期で栽培をした。間欠区の明期を20.5hとしたのは,予備実験において対照区明期12h分の総光合成量を間欠区で得るためには20.5hかかるという結果に基づいた。測定項目は質量,葉面積(正面・平面),全長とし,正面と平面の葉面積を乗じたものを疑似体積として算出した。質量はトレイから水を除き電子天秤にて測定した。葉面積については,植物の正面と平面からデジタルカメラで写真を撮り,画像処理ソフトを用いて葉の部分を抽出して求めた。全長についても同様に正面からの写真においてトレイの接地面から植物の最上点までの長さとして求めた。質量,葉面積,全長は対照実験開始2週間前より定期的に測定を行った。その他,葉の色や形・栽培早期での花芽形成などの異常は目視で確認をした。最終的に単位電力消費量あたりの収量を求め,生産効率について検討した。

3. 結果および考察
 予備実験として,試作した装置で同じ照明条件下でサラダナを育て,照明器具による生育の差がないことを確かめた後,対照実験を行った。実験の結果,質量,葉面積,全長,疑似体積において両区で有意差は見られなかった。電力消費量については,間欠区は対照区の約75%であった。葉の色や形・栽培早期での花芽形成などの異常は特に見られなかった。単位電力消費量あたりの収量は対照区に比べて間欠区が約24%多かった。これらの結果から,間欠照明下でも,正常に植物栽培が可能で,照明コストを抑え生産効率を向上させる可能性が示された。