農作物の生産流通履歴の消費者への伝達方法の検討

農作物の生産流通履歴の消費者への伝達方法の検討

坪田将吾

1.はじめに
 農作物における消費者の最大の関心事である,安心・安全と呼ばれている品質の保証にトレーサビリティの確立は必要不可欠であり,様々な取り組みが進められている。現在作物に情報を付加する技術はあるが,販売段階において消費者が詳細な情報を得ることができない。そこで,本研究では販売段階における農作物の生産流通履歴の消費者への伝達方法について検討した。

2. 検討方法
 消費者が@どの様な情報を得たいか,Aどの様な方法でなら得やすいか,を5段階評価のアンケートで集計した。その結果を基に情報端末を試作し,実際に消費者に操作してもらい,Bその感想についてアンケートを実施した。Bの内容は,その端末を利用したいかどうか,更に詳しく知りたい情報・付加して欲しい機能,表示方法の妥当性について聞いた。@,Aは岡山大農学部FSC販売所,スーパーマーケットで50人ずつ,Bは販売所で50人の消費者を対象に行った。

3. 結果および考察
 アンケート@,Aの結果を,表1,2に示す。値は消費者100人の評価の平均値で高い方が得たい,利用したいことを表す。@,A共に,商品を選ぶときに情報を得たいという意見が多く,@では質問した全ての項目に高い点がつき,Aでは,機械操作が苦手,面倒なことはしたくないという意見が多かった。年代別,職業別には,顕著な傾向は見られなかった。また,同時に,「携帯電話で二次元バーコードを読み取ることができますか?」という質問に対しては半数以上の消費者が「読み取ることができない」と回答した。 この結果を基に,スーパーマーケット等で情報を見ながら農作物を選ぶことを想定して情報端末を試作した(図1)。アンケートAの結果では,機械を使った情報の表示方法は高評価ではなかったが,店頭,値札等の農作物の情報を表示するスペースが情報量に比べて小さいので,機械を使うことで多くの情報を見やすく表示できる端末を作ることにした。この際,機械操作が苦手な人でも使いやすいように操作を簡易化した。表示する情報はアンケート@の結果から,より多くの項目にした。操作の流れは,各々の商品に対応したバーコードをリーダで読み取ると画面上に生産流通履歴が表示され,さらに,タッチパネルを利用した画面を操作すると,1ページに収まりきらない情報が現れるようにした。また,バーコードは直接商品に貼るか,商品の近くにカードとして置いておくこととした。バーコードを読み取ると,商品,生産者の写真,産地,価格,収穫日,出荷日,品種,銘柄が表示され,タッチパネルで流通経路履歴,使用農薬情報,取り扱い方法(調理法,保存法)をそれぞれどのページからでも閲覧できるようにした。さらに,店頭に同じ品目でも数種類販売されていることを想定して,比較表(産地,値段,品種)のページも作成した。 アンケートBでは,78%の人が利用したいという高評価を得た。機能性の要望として印刷機能が欲しい(26%),表示する情報については,農薬の安全性についてもっと情報が見たい(21%)という要望が多かった。印刷機能の要望は,売り場にプリンタを設置すること等が改善策として挙げられる。農薬の安全性については,残留基準を表示する等が考えられるが,解りやすくして欲しいという人が多かったため,この表示方法はさらに検討していく必要がある。