ナスを対象とした移動型選果ロボット -画像処理アルゴリズムの改良-

ナスを対象とした移動型選果ロボット -画像処理アルゴリズムの改良-

井口 豊

1. はじめに
 これまでの移動型選果ロボットにおける画像処理システムのアルゴリズムは,果実を囲む長方形の縦横比を基にした非常に簡素なものであり,必ずしもナスの形状を正確に数値化しているとはいい難い。そこで本研究では,より詳細に曲がりや太さなどの果実の特徴を表すことを目的に,果実の中心線や各部分における果実幅などのパラメータを用いた画像処理アルゴリズムを検討した。

2. 画像処理アルゴリズム
 収穫された果実はロボットのマシンビジョンまで搬送され,画像入力が行われる。得られた画像に二値化などの前処理を行ったあと,各パラメータを求める。図1に示すように,まず果実の中心と果実両端の2点(最遠点)を通る円の中心を求めて基準点とした。つぎに基準点から放射状の直線を等間隔に引いて果実を分割した。分割された部分の長さを果実幅Wiとし,最大の果実幅をWmaxとした。各断面の中点を連結して果実の中心線(長さS)とし,中心線の両端を結んだ直線の長さLを果実長とした。これらのパラメータを基に,果実の形状を表す曲率,円形率,先細りなどのパラメータも算出した。曲率はL/Sで求められ,曲がりのない果実ほど1に近い値を取る。Wmax/Sで求められる円形率は果実の丸みを表すパラメータであり,円形に近い果実ほどその値は1に近づく。また,先細りは果頂部のくびれた形状を表すものであり,果実幅Wiの差分を求め、その変化の推移から求めた。また,同様に果実幅Wiの変化の推移から,ガクと果実の境界も検出した。今回の実験では,株間60 cmで8株の千両ナスを3列,農学部内のビニルハウスで栽培し,収穫されたナス20本を実験対象とした。

3. 結果および考察
 表1に従来のアルゴリズムを用いた画像処理結果との比較例を示す。従来のアルゴリズムでは,果実を囲む長方形の縦および横の長さの比を用いて果実幅や曲率を求めていた。よって,異なる形状の果実でも縦横比が同様の値となることがあり、正確な特徴の抽出は困難であった。本研究で開発したアルゴリズムでは,曲がりや太さなどに関わるパラメータの算出は独立しており,互いに影響を及ぼさないため果実の形状を反映した値が算出されている。表2には今回のアルゴリズムを用いた計測結果の例を示す。曲がりの大きな果実ほど果実長Lに対する中心線の長さSが大きいため,曲率は小さな値となり,最も曲がりの少ない果実Dが高い値となっている。また,円形率は果実Cが、先細りにおいてはBが他の果実に比べても非常に高い値となり,果実の形状をよく表していることが分かる。以上の結果から,今回検討したアルゴリズムによって果実の様々な特徴を具体的に数値化できたといえる。今後,このアルゴリズムを移動型選果ロボットに実装することにより,果実の形状に関わるより詳細な品質情報が獲得できると考えられる。