植物光合成応答に基づく間欠照明方法の検討
丸山 和美
1. はじめに
近年の植物生産の方法の一つとして植物工場がある。気象にも左右されず周年で供給が可能であるが,環境の制御にかかるコストが課題となる。昨年の実験において,消灯・点灯の比を1:1とした間欠照明を行った場合,1分間点灯当たりのCO2吸収量は連続光の1.2倍となり,点灯時間当たりの光合成量が増加することが分かった。本研究では,エネルギの利用効率をさらに向上させるために,点灯方法を変えてCO2吸収量を計測した。
2. 装置および方法
サラダナを供試作物とし,環境制御室内において,CO2アナライザと自作のリーフチャンバを用い,植物体全体のCO2吸収量を計測した。サラダナは明期・暗期12時間の周期で育成し,環境条件はPPFD250μmol/m2/s,温度20℃,湿度80%とした。
まず,明期に一時消灯し,CO2濃度の安定した状態から,50%と100%の2段階で光強度を変化させた実験を行い,光強度に対するCO2吸収量の変化を計測した(実験1)。ここで,光強度100%はPPFD250μmol/m2/sとした。さらに20%ごとの5段階で光強度を変化させた実験を行った(実験2)。また,エネルギ利用効率は,光合成量(CO2吸収量)の総和を,点灯時間と光量の積で割ったものとして検討した。
3. 結果および考察
図1に100%の光強度を照射したときの,光合成量の変化の一例を示す。なお,暗期下の光合成量の安定した値の平均値を0とし,光合成量の最大値を100%として算出した。光合成量は,点灯後,直ちに最大値に達するのではなく,5分程度は大きく変化するが,その後は緩やかに最大値へと向かった。そこで,点灯直後から100%の光強度にせず,徐々に光強度を上げていく方法を検討した。
実験1の結果を図2に示す。2段階で光強度を変化させた場合,50%の光強度を点灯した直後から光合成量は大きく変化し,5分後以降は緩やかな値となった。その後,光強度を100%にすると,光合成量は再び大きく変化し,5分後以降は緩やかな値となった。光強度を変化させたときにも,光合成量は大きく変化することが分かったので,光合成量が大きく直線的に変化する部分を組み合わせるように,光強度を変化させるタイミングを検討した。
光強度を5段階で変化させた場合の実験結果を図3に示す。実験の結果,光強度を変化させなかった場合と比べると,エネルギ利用効率は1.5倍となった。このことから,徐々に光強度を増加させることによって,エネルギ利用効率を上げられることが分かった。さらに,この効率を向上させるためには,光強度を直線的に変化させればよいと考えられた。