ナスを対象とした移動型選果ロボットの開発〜全体の構想、供給部・画像処理部の試作〜

ナスを対象とした移動型選果ロボットの開発
〜全体の構想、供給部・画像処理部の試作〜

杉山 泰郎

1. はじめに
 現在、ナスの品質評価は画像処理によって農家単位で栽培されたナスの非常に細かく正確なデータを得ることが出来るようになっている。しかし現状では、収穫されたナスは一度集荷場に集められてから品質評価を行うため、得られた品質データと圃場において施された水や肥料の投入量などのデータとの関連付けがなされていない。そこで本研究ではナスの品質データと栽培環境のデータを関連付けすることを目的とした移動型選果ロボットを考案・試作し、動作実験を行った。

2. 実験装置
 移動型選果ロボットは収穫したナスを待機させるターンテーブル、画像処理を行うためにナスを移動するマニピュレータの2点からなる供給部、品質評価を行うマシンビジョン、ナスを全面撮影するためのバケットの2点からなる画像処理部、仕分けを行う排出部、移動型選果ロボットの位置情報を得る走行部の以上4つのセクションで構成され、本研究では供給部と画像処理部のバケットの試作を行った。

3. 実験方法
 収穫から選果までの流れを図1に示した。実験対象は岡山大学農学部内で栽培された収穫適期のナス121個(品種:千両ナス)とし、実験は2つ行った。実験1…121個のナスを全て選果ロボットにて選果し不具合の内容と発生頻度を確認した。 実験2…(1)においてハンドがナスの把持を失敗した事例について失敗したナス7本と無作為に選出したナス7本の合計14本を1本につき40回(10回ごとに置きかたを90度回す)ずつ選果し、ハンドが把持を失敗しやすいナスの形状と失敗の発生頻度を調べた。



4. 実験結果および考察
 まず実験1の結果を表1に示す。実際に発生した不具合は原因不明の動作不良、ハンドがナスの把持に失敗した事例とターンテーブルの寸法に対して規格外であった事例の3点であった。そのうち動作不良に関してはプログラムに改良を加える事で3回目には0件にすることが出来た。次に実験2の結果を表2示す。ある通常ナスは置き方Cにおいて連続してハンドによる把持に失敗するなど、不具合が一定の確率で起こるというより、むしろナスの形状とターンテーブルへの置き方の組み合わせが不具合の発生の起因となる可能性が高い。以降は排出部、走行部の完成に加え、設計思想から完全に規格外であったナスへの対処、ハンドの改良などが課題である。