大規模生産施設におけるトマト収穫ロボットの開発−外界センシングシステム−

大規模生産施設におけるトマト収穫ロボットの開発−外界センシングシステム−

生命環境学専攻(環境生態学) 34417210 西崎 典子

1. はじめに
 本研究では,人間協調型トマト収穫ロボットの外界センシングシステムとして,果実検出および安全システムに関する検討を行った。 2.実験装置 果実検出にはカラーTVカメラ(解像度512×480)とレーザ距離計を,安全システムにはレーザ距離計を用いた。レーザ距離計は0.36°間隔で周囲240°の水平面上を走査し,2次元の距離情報を収集する。

2. 実験装置および方法
 果実検出についてはカラーTVカメラの画像を基に,色情報を用いた収穫適期果実の抽出ならびにエッジ検出フィルタによる果房内の果実の分離を行った。また,レーザ距離計からの距離情報を基に,果実の分離や前後関係の検出を行う方法も検討した。安全システムに関しては,レーザ距離計によって0.2秒間隔で収集する距離情報を基に,背景(株や柱など)と人間との識別ならびに人間の移動を検出した。

3. 結果および考察
 @果実検出:図1に検出結果例を示す。まずは原画像に対してHLS変換およびSobelフィルタによる処理を行い,赤の領域ならびに輪郭線の抽出を行った。次に両処理画像を統合し,果実の検出と分離を行った。実験の結果,ほぼ良好に検出されたが,隣接する果実との境界(影の部分)が明瞭でない状況では分離できない場合があった。レーザ距離計を用いた実験(図2)では,得られた距離情報の差分を求めることにより,境界を検出することが可能であった。よって,画像による熟度判断,画像および距離情報による分離を併用すれば収穫適期果実の検出に有効であると考えられた。A安全システム:図3に実際の施設で行った実験結果(表示は1秒間隔)の一例を示す。背景以外に,一定の幅以上の物体があれば,それを移動物体と見なし,その中で最も距離の小さな点を代表点とした。人間と背景との分離や人間の移動の検出も良好に行われており,レー ザ距離計による安全システムの有効性が確 認された。今後はこの情報をロボット制御 (加減速,停止など)にフィードバックす ることで,人間との協調作業が可能となる。