光合成速度計測に基づく光エネルギ有効利用に関する研究

光合成速度計測に基づく光エネルギ有効利用に関する研究

生命環境学専攻(環境生態学) 34417202 伊藤 祐介

1. はじめに
 近年の植物生産の方法の一つとして植物工場がある。異常気象にも左右されず周年で供給が可能であるが環境の制御にかかるコストが課題となる。植物の生育に連続照明は必ずしも必要でないことから間欠照明を適用してエネルギコストの削減を行うこととした。本研究では,効率的な光の利用を行うことを目的としてCO2吸収量を計測した。

2. 実験装置および方法
 供試植物としてサラダナを用い,環境制御室内において, CO2アナライザと自作のリーフチャンバを用い,植物体全体のCO2吸収量を計測した。サラダナは明期・暗期2時間の周期で育成し,環境条件はPPFD250μmol/m2/s,温度25℃,湿度80%とした。まずCO2吸収量最大時に30分間消灯し,点灯・消灯に対するCO2吸収量の応答を計測した(実験1)。次にCO2吸収量最大時に1分間・5分間の消灯を行ったときのCO2吸収量の変化をそれぞれ計測した(実験2)。

3. 結果および考察
 実験1の結果を図1に示す。なお暗期下のCO2濃度の安定した値の平均値を0としてCO2吸収量最大時を100%として算出した。消灯直後,CO2吸収量は直ちに0とはならず,10分程急激に減少し,その後,緩やかに0へと向かう。再点灯後は5分間程急激に変化し,その後,緩やかに元の値へと戻った。実験2の結果を図2に示す。1分消灯区では5分消灯区に比べ,消灯からの応答は緩やかであった。この方法を利用して効率的に光合成を行うためにはCO2吸収量を最大より抑えた状態を維持することで効率化が望める。そこで,点灯時間当たりの光合成量を増加させるために,この急激な変化量の大きい時間を利用して5分間の消灯・点灯を繰り返すこととした(実験3)。5分間の消灯・点灯を3度試行したときのCO2吸収量の変化を図3に示す。消灯・点灯区のそれぞれの10分間において,1分間点灯当たりのCO2吸収量は連続光の1.47・1.36・1.31倍となり,点灯時間当たりの光合成量の増加ができたといえる。しかし,CO2吸収量は徐々に減少している。これは点灯・消灯による減少量と増加量が一致しなかったためである。効率的な光の利用のために今後さらに最適化を図っていきたい。