LVQを用いたナスの品質評価パラメータの検討

武田 真和

1.はじめに
現在,ナスの品質評価(JA備南支所)では画像から得られた各種のパラメータが用いられているが,それらの重みは季節によって変動し,選果状況に合わせて人間の感覚や経験によって逐次設定されている。本研究では,品質評価の各種設定の自動化を行うことを目的として,LVQを用いてパラメータの重みを定量的に把握することを試みた。

2.材料および方法
LVQ(Learning Vector Quantization)は音声や画像認識などに用いられており,教師データによって入力層と出力層の間の重みを修正しながらモデルを学習させる2層構造型の手法である(図1)。


実際の選果では,対象物の18種類のパラメータを用いて4段階の品質で評価している。このため本研究でも,入力値を18次元のベクトルとして扱うために18個の入力ユニットを用意し,出力層には4段階の品質にそれぞれ対応する4つの出力ユニットを用意した。学習においては,まず式(1)を用いて各出力ユニットと入力ベクトルとの距離を計算し,最も距離の小さい出力ユニットを入力ベクトルに対する品質とした。その結果が教師データと一致すれば式(2)を,異なっていれば式(3)を用いて重みベクトルを更新することで学習を行った。


学習が完了したLVQでは,重みの総和が大きなパラメータほど出力に大きな影響を及ぼしていると考えられる。そこで本研究では,式(4)を用いて各パラメータの寄与率を求め,パラメータが評価に及ぼす影響を示す指標とした。供試材料として2003年11月,2004年1月,6月に選果された,それぞれ2000個のナスのデータを用いた。

3.結果および考察
2000個のナスを用いて学習を行った時の正解率を表1に,各パラメータの寄与率を表2に示す。学習の結果,本モデルの正解率は,いずれも90%以上となった。色ムラ,白ガク,青ガク,ガク面は,いずれの月も高い値を示した。色ムラは日照不足が原因のため冬に値が高くなり,表面傷や尻傷は虫害によるものであるため, 6月に高くなり,虫の少ない11月,1月には,低くなったと考えられる。このように,LVQを用いることで品質評価に及ぼす各パラメータの重みを定量的に表すことができた。今回の手法をもとに,他の月に対しても検討を行うことで,高い精度での品質評価が可能になると考えられる。