RGBおよび近赤外画像を用いたナスの品質評価

チョン ブイキョン

1.はじめに
現在,ナスの品質評価はカラーカメラ(RGBカメラ)を用いたマシンビジョンによって行なわれている。しかし、ナス果実は黒紫色を呈するため可視領域における病虫害の検出には限界がある。そこで本研究では、近赤外にも感度を有するカメラ(RGB+NIRカメラ)を用いて,従来検出困難であった病虫害への有効性を検討した。

2.実験装置および実験方法
実験装置として,RGBカメラ (感度:380〜770nm) ,RGB+NIRカメラ (感度:380〜1400nm) ,ハロゲンライトを用いた。果実は搬送用バケット上に置き,実際の選果施設での画像入力の状況を再現した。実験方法としては,まず各傷や病虫害を有する部位の分光反射特性(190〜2600nm)を分光光度計により計測した。そして,RGBおよびRGB+NIRカメラで撮映した画像を色度変換ならびにHSI変換処理で解析した。なお,ナスの傷や病虫害は季節によって変化するため,毎月(10月〜6月)約200個のサンプルを用いて計測を行なった。

3.結果および考察
図1に正常果といくつかの病虫害部分の分光反射特性の一例を示す。可視領域においては,一部の病虫害を除き全体的に低い反射率を示しているが,近赤外領域においては,正常果と病虫害の反射率に大きな差が見られた。このことからも,近赤外領域を利用することによって,病虫害の検出精度が向上すると考えられた。図2にRGB+NIRカメラで入力した画像に対し,HSI変換を行なった結果の一例を示す。色度変換では,正常果と病虫害を有する果実の区別は可能であったが,各病虫害の種類を識別することは困難であった。一方,HSI変換では,病虫害ごとに彩度の差が生じたため,それらの識別も可能であった。表1にRGBカメラおよびRGB+NIRカメラによる検出結果の比較を示す。色むらやガク色など,色の変化を伴う病虫害の場合は,カメラでも検出が可能であった。焼けや押し傷など,色の変化がほとんどなく,RGBカメラでは検出が難しい場合でも,近赤外領域を利用することによって,検出が可能であった。このようにRGB+NIRカメラ画像とHSI変換処理することによって,品質評価精度の向上が期待される。