農業分野におけるテレロボティクスの研究 −移動機構の改良−

農業分野におけるテレロボティクスの研究 −移動機構の改良−

田鍋 雅弘

1. はじめに
 人間とロボットが協調して作業を行うテレロボティクスの研究がこれまで行われてきたが移動機構の制御は行っていなかった。そこで本研究では,制御が可能な移動機構に改良し,ほ場にてロボットを用いた実験を行った。

2. 実験装置
 ロボットの走行部には市販の電動台車(以下,台車と称する)を使用し,試作したレール上を移動させることとした。台車の速度はレバーの位置によって調節可能で,最大積載量300kg,最大速度1.25m/sである。台車の前進,停止はソレノイドによってレバーを一定の位置に移動させて行った。また,ロータリエンコーダを前輪の回転運動と連動させて移動距離を検出した。ほ場での実験ではレーザ距離計とカラーTVカメラを装着した情報収集ロボット(質量62.1kg)と収穫ロボット(質量82.5kg)をそれぞれ搭載した。

3. 実験方法
 走行中に台車を急停止させると搭載した機器に影響を与えるため,本研究ではソレノイドをOFFにしたあと,強制的にブレーキをかける操作は行わずに停止させることにした。そこでまず,台車を発進させてから設定距離に達するとソレノイドをOFFにし,実際に停止した位置を計測した。計測は設定距離および積載質量(2台のロボットに相当分)を変化させて行った。ほ場での収穫実験では,まず情報収集ロボットを搭載し,台車の停止位置とトマト果実の3次元座標を検出する。次に収穫ロボットを搭載し,台車が停止した位置と情報収集ロボットの停止位置に差があれば,収穫対象果実の座標を補正して収穫動作を行うものとした。

4. 結果および考察
 図1に台車の走行距離と速度の一例を示す。ソレノイドをONにすると加速後400〜500mm/sの速度で走行し,ソレノイドをOFFにすると500mm程度走行して停止した。図2はソレノイドをOFFにした時の距離と実際の走行距離を示す。結果より,ロボットが隣り合う株間(距離500mm程度)を移動するには,情報収集ロボットで193mm,収穫ロボットでは224mmの距離がエンコーダで検出された時点でソレノイドをOFFすればよいことになる。ほ場実験(図3)の結果,両ロボットの停止位置の差は6mm程度であり,マニピュレータの作動領域を越える場合はなく,補正した果実の3次元座標をもとに収穫動作が行われた。



図1 台車の走行距離と速度

図2 ソレノイドOFF時の距離と走行距離

図3 実験風景

卒論発表
テレロボ