ニューラルネットワークを用いたナスの品質評価パラメータの検討
ニューラルネットワークを用いたナスの品質評価パラメータの検討
麻生 麻衣子
1. はじめに
現在,ナスの品質評価(JA備南支所)では画像で得られた23個のパラメータが用いられているが,各パラメータの重みは選果状況に合わせて人間の感覚に基づいて逐次設定されており,評価結果と各パラメータとの相関は不明瞭である。そこで本研究では各パラメータが品質評価に及ぼす影響の定量化を目的として,ニューラルネットワークを用いて検討した。
2. 供試材料及び実験方法
本研究では供試材料として,6月,11月,1月に選果されたナスを用いた。ニューラルネットワークの構成は図に示すように,ユニット数がそれぞれ入力層18個,中間層25個,出力層4個の3層階層型ネットワークとし,評価関数には式(1)に示すシグモイド関数を,ユニットの結合の重みの修正には教師データと出力値との誤差を逆伝播するバックプロパゲーション法をそれぞれ用い,学習結果を逐次更新するオンライン学習を行った。
・・・(1)
学習データには選果に用いられるパラメータのうち等級に関する18個の値をそれぞれ正規分布関数の確率密度に変換した値を用い,教師データには,4段階ある品質評価結果を4つの出力ユニットに対応付けたものを用いた。学習が完了した階層型ニューラルネットワークでは,重みの総和が大きい入力ユニットほど出力に大きな影響を及ぼしていると考えられる。そこで本研究では,式(2)を用いて各入力ユニットの寄与率を求め,パラメータが評価に及ぼす影響を示す指標とした。
・・・(2)
i:入力層ユニット,j:中間層ユニット,w
ij
:入力層重み
3. 結果および考察
6月,11月,1月に収穫されたナス各800個を用いて学習を行った場合の各パラメータの寄与率を表に示す。月別でみると,6月は白ガク,首曲,大径,尻傷の寄与率が高く,11月は表面の傷,太差,1月は表面の傷の寄与率が高くなった。尻傷や白ガクは虫害によるものであるため,寄与率は6月に高くなり,虫の発生の少ない11月,1月には低くなったと考えられる。また,形状に関するパラメータである首曲や大径の寄与率が6月に高くなったのは,6月はナスの木が衰弱しており奇形が多く発生したからであると考えられる。色ムラは日照不足が原因のため冬に寄与率が高くなると予想されたが,実際には季節によってあまり変わらなかった。このように,ニューラルネットワークを用いることで各パラメータが評価に及ぼす影響を定量的に表すことができた。今回は,三ヶ月分のデータを用いたが,他の月も含めた一年を通しての検討を行えば,各パラメータが品質評価に及ぼす影響の変化を把握できると考えられる。
h:しきい値
w:結合重み
Y:ユニット出力
図 ニューラルネットワークの構成
表 各パラメータの寄与率
卒論発表
備南選果場