空気イオン発生装置の青果物水分損失に与える影響

空気イオン発生装置の青果物水分損失に与える影響

重松 健太

1. はじめに
 近年,空気イオンが生物に対して及ぼす影響について数多くの報告があるが,作用機構など不明な点も多い。本実験では,空気イオンが青果物に与える影響を調べるために,空気イオン曝露環境下で青果物の水分損失を測定し,品質保持への応用の可能性を探った。

2. 実験装置及び方法
 本実験では,環境制御室内に空気イオン発生装置と供試青果物を入れた試料箱を設置した。試料箱にはファンにより空気イオンを取り込む吸入口と排気口をつけた。空気イオン発生装置には,発生部の形状が異なる針電極型,線電極型,円筒電極型の3種類を使用した。図1にこれらの電極の模式図を示す。線電極型は,線状のマイナス電極全体から板状のプラス電極へ放電させることにより,空気イオンを発生させて風で送るものである。針電極型は,針状のマイナス電極の先から放電を行い,円筒電極型は,線状のマイナス電極全体から等距離にある円筒状のプラス電極へ放電することでそれぞれ空気イオンを発生させるものである。空気イオンの測定は空気イオンカウンタを使用し,供試青果物の色の変化はデジタルカメラの画像によって記録した。供試青果物は,岡山産コマツナを使用した。環境制御室の温度湿度を20℃,65%RH及び 30℃,80%RHに設定し,試料箱5個を1つの区とし対照区と3つの試験区で観察を行った。その際,ビニルシートで各区を隔離した。空気イオンの曝露はコマツナ設置12時間後から開始し,12時間毎に測定した質量と画像で比較した。また,試料箱の排気口から10cm離れたところに空気イオンカウンタを設置し,空気イオン発生量を測定した。


3. 実験結果及び考察
 実験期間における各区の空気イオン発生量の平均は,対照区20個/cm3,線電極区1680個/cm3,針電極区4320個/cm3,円筒電極区230個/cm3であった。20℃,65%RH条件下では,対象区と試験区で有意差は認められなかった。図2に30℃,80%RH条件下で実験開始時のコマツナの質量と経過時間毎の質量の比を示す。実験開始24時間後に対照区と最もイオン発生量の多かった針電極区間に有意差が認められ,72時間後には8%の差となった。環境条件を変えても各区の空気イオン発生量に差がなかったことから,青果物の状態によって空気イオンの影響が変わってくることが考えられた。色の変化については,特に差は認められなかった。


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