穀粒の流動化に関する基礎研究
河井 正樹
1. はじめに
穀物の収穫後の輸送には,空気輸送の技術の利用が盛んに利用されている。この技術には低濃度高速輸送(浮遊輸送)と高濃度低速輸送(プラグ輸送)がある。プラグ輸送は浮遊輸送に比べて圧力損失が少なく,エネルギー効率は高いが,穀粒の破砕損失や管路の磨耗は大きい。そこで本研究は浮遊輸送で,重力による非対称性が少なく,現象を単純化して見ることができる鉛直管内の穀粒の流動化について実験を行い,その現象について検討を行った。
2. 実験装置及び方法
実験には図1のような実験装置を使用した。同図@の整流板として,織金網100,80,50,30,10meshの5種類を用い,実験材料として,玄米,籾をそれぞれ100〜500gの間で100gずつ5段階に分けて供試した。送風機の回転速度を17段階(200rpmずつ)に変化させてA,B間の静圧降下ΔPと風速を測定し,同時に穀粒の運動状態をビデオに記録した。なお空隙率を一定にするため一度穀粒を吹き上げた後,ゆっくり堆積させ,充填方法の差に影響がないようにした。測定は風速を増加させた場合のみ行った。
図1 実験装置
3. 実験結果及び考察
本実験の一例として10meshの整流板,玄米の場合の風速と静圧降下ΔPとの関係を図2に示す。風速が0.6〜1.1m/s以下では穀粒は動かなかった。風速0.6〜1.1m/sになると上層部のわずかな穀粒が動き始めた。この時の風速を流動化開始風速といい,充填量,整流板,穀粒などの変化では影響が見られなかった。さらに送風機の回転数を約200rpm上げると穀粒が管中央部から噴水状に噴出し始めた。この時風速は一気に2〜2.2m/sへと上昇した。低充填量の時はしばらく噴水状に噴出するが,高充填量の時は噴水状態がすぐに終息する傾向があった。その後穀粒の状態は次第にら旋状態となり,風速3.9〜5m/sの範囲で均一流動状態に達した。流動化開始風速から一旦ΔPは下がる傾向が見られたが,これは流動化開始風速では穀粒がまだ噴き上がっていない状態で,圧力が穀粒を噴き上げるために使われたため,ΔPが最大になると考えられた。100meshの整流板,玄米と籾における風速とΔPとの関係を図3に示す。籾と玄米では流動化開始風速までΔPはほとんど変化がないが,流動化開始風速より大きくなると籾の方がΔPが高くなった。これは籾と玄米の表面の摩擦係数と体積の差がΔPに影響しているものと考えられる。
図2 風速と静圧降下との関係(10mesh,玄米)
図3 玄米と籾における風速と静圧降下との関係