青果物の品質評価に関する基礎的研究
−ナスのつやなし果判別手法の考察−
森本 純
1. 研究目的
ナスの品質評価では表面の光沢(つや)が重要視される。しかし,果実の形状は一様ではなく物理量として光沢度を取り出すことが難しいため,機械による判別例は少ない。本研究では,@光沢の程度を決定付ける表面状態の違いを測定すること,Aつやなし果を判別するために,機械による果実表面の光沢の実用的な識別手法についてその基礎的研究を行うことを目的とした。
2. 実験装置と方法
@ナス表面の微視的観察のために,非接触走査型白色干渉法を用いた三次元表面構造解析装置(NewView200)を使用した。収穫直後より24時間間隔でつやなし部と正常部の表面の状態を0.3mm四方で各5回観察した。Aナス表面の光沢を識別するためには,果実に等距離から光を均等に当て,その反射光を画像に取り込む必要がある。本研究では,環形蛍光灯(30型、色温度7200K)2本を上下に配置した中にナスを設置し,1個体につき4方向からデジタルビデオカメラで撮影を行った。撮影画像は画像処理ソフト(WinROOF)で解析した。画像処理は,原画像をカラー分離してBで階調化した後,画面上を16画素四方の小領域に分割し,領域内の濃度の平均値と分散値を,正常部,つやなし部においてそれぞれ求めた。測定値をもとに,正常部とつやなし部の濃度範囲のしきい値を決定した。さらに画像上でしきい値内の小領域を統合することで,正常部とつやなし部を分割し,判別を行った。図1に画像処理のフローチャートを示す。
図1 画像処理のフローチャート
3. 実験結果と考察
@微視的な部分において,正常部とつやなし部の明確な差異を非接触で認めることができた。解析装置によって撮影されたナス表面の正常部では,図2に示すように比較的大きめの凹凸が見られた。対して,つやなし部では細かな凹凸が見られ,この凹凸のために表面上で乱反射がおこり,つやなしの状態が見られると推察された。Aしきい値の決定に用いなかった原画像を使用して,つやなし部の検出を行った。正常果30画像中,つやなし果として誤認識したのは3画像であり,つやなし果30画像中,正常果として誤認識したのは3画像であった。よって,正しく判別されたのは90%であった。今回,目視できる程度のつやなし部の判別は機械でもほぼ行えることが示されたが,人間の目でも瞬時に判断し難い小範囲のつやなし部検出を可能にするためには撮影方向等の検討が必要であると思われた。
図2 表面状態の測定結果