常温煙霧機における静電散布の有効性

常温煙霧機における静電散布の有効性

濱田 聡

1. はじめに
 粒子を散布する際に静電化させることによって粒子の付着性,指向性,運動性が向上する。既に工業分野ではこの現象を利用した静電塗装が広く普及している。近年,農業分野においても防除機にこの技術を応用し,農薬の植物体への付着性を向上させ,農薬の拡散を防止するための研究が進められている。本研究では静電散布が可能な常温煙霧機を使用し,ハウス内において静電散布を行った場合の有効性について調べた。

2. 実験装置および方法
 ハウス内に設置した測定点を図1に示す。静電位の計測はD5,D7,F7の地上高100cmにおいて行った。また,D5,D7,F5,F7に幅12cm,高さ110cmの板を立て,地上高100cmの位置でノズルに対して正面および裏面にミラーコート紙を設置した。噴霧は3分間行い,静電散布した場合としなかった場合について,8時間後ミラーコート紙を回収し,粒子の付着面積,粒径を計測した。


図1 ハウス内計測点

3. 実験結果および考察
 静電位はどの測定点でも検出され,静電化した粒子はハウス内に拡散していることが分かった。D5地点での付着実験の結果を表に,粒子の付着状態を図2に示す。静電散布では通常散布に比べ,目標物の裏側への粒子の付着が増加することが観測された。これは静電化した粒子が目標物の周囲に形成される電気力線に沿って動く力が働いた結果であると考えられた。また静電散布では粒径がより小さく均一化していることが観測された。これは液体粒子を静電化すると,粒子表面の電荷が反発し合い,見かけ上の表面張力が減し,大きな粒子を維持できなくなり,その結果,粒子がより細かく分裂する静電微粒化によるためである。この粒子間の反発力によって運動性の向上,微粒子の状態維持が生じていると考えられた。以上の結果から常温煙霧機に静電散布を導入することで,粒子の付着性が向上し,農薬使用量の減少が期待できる。さらに粒子の微粒化,均一化により農薬付着のむらを防ぐだけでなく,煙霧機の特性である粒子の浮遊拡散性

図2 静電散布による粒子の微粒化ハウス内計測点

表 材質の比較実験結果
 通常散布静電散布
被覆率 (表) (%)16.021.0
被覆率 (裏) (%)9.7 13.3
付着粒数78 351
平均粒径 (μm)44.7 19.4
最大粒径 (μm)132.649.5
分散717.6 71.5